音が出ないようにドアを閉めると、息を殺して足音が過ぎるのを待つ。
音が出ないようにドアを閉めると、息を殺して足音が過ぎるのを待つ。



ふぅ…どうやら行ったみたいだな





いったいあの悪寒は何なんだ。それにあの足音も…。だいたいここはどこなんだ





いらっしゃい





うわぁッ!


振り返ると、不気味な老婆が座っていた。
部屋の中は薄暗く、漢方薬のような臭い充満している。



あんた、どちらさんだい?





勝手に入ってしまいすみません。僕は葛城高校1年の花木聡一と言います





ほう、それじゃ桜と同じ学校だ





はい、今日は桜さんと一緒にご家族と食事をするはずだったのですが…。もしかして、桜さんのお婆さんですか?





………


老婆は無言で立ち上がると、おもむろに部屋の隅にある鍋のふたを開ける。



あの?お婆さん?


何かの動物の断末魔が聞こえる



お、お婆さん!?





でやぁッ!コイツゥウ!!





ひ、ひぃいいい!





次は、あんただ…


老婆は手から鮮血をしたたせながら、こちらに笑顔を向けてそう言った
その光景を見て、体中の細胞が”逃げろ”と叫んだ



た、助けてー!!





だ、ダメだ…もうこれ以上この屋敷にいられない





このままじゃ、きっと殺される!





でも、桜は…





そこの君…





わッ!?今度はなんだ?





私はこの屋敷…百目鬼家にとりついている霊だ





れ、霊ッ!?





そんなに驚かないでくれ、大きな声を出すとこの家の住人に気づかれてしまう





あ、あんた何者なんだ。この家の人たちなんかおかしいんだ。それに家自体が不気味で…





それはそうだ。百目鬼家は鬼の血を受け継ぐ一族だからな





鬼の血って、なに?





興味があるなら教えてやろう。ただし、あいつから逃れられたらだがな





あいつって…


また、あの嫌な悪寒が背中に走る。それはいままでのものよりはっきりと、強く感じる。



まただ、何かに見られている





私が言うとおりに走れ!じゃなきゃ命はないぞ!!


足音がどんどん近づき、前方に現れる



おい、もう逃がさねぇぞ!!
何度も何度も隠れやがって!!





ば、化け物!?


つづく
