暗躍展覧会 その1



いつでも、どうぞ。





すぅ、





行くわよ!


対面で向き合う、スネイク、ククリ。



でりゃあああああ!






あっぶね





いいケリです……


顔面に、めり込む鮮やかなケリ……!
崩れ落ちるは、“アルマド”。



アルマドぉ~~~!?





やっちまった~~! ごめーーーーん!


仮眠用ベッドから恨めしげに目を向けるアルマド。



組手の審判をしてくれと言うから引き受けたんですけれども。





ごめんってば。スネイクが避けちゃうもんだから。





許せアルマド。仲間のことは大切だが俺も自分の命が惜しかったんだ。





グリグリグリ(万力のような力で抑え込み、拳で頭をすりおろす音)





ぐおおおおおおああああああああ


いつもの活気あるブラックガード事務所!



ふむ。


そんなこととはお構いなしに、読み物にふけるリチャード。今日は依頼はないのだろうか。時間に余裕がありそうである。
そこに。



邪魔するわよ。





おうおう邪魔なら帰ってもいいんだぜ、お嬢ちゃ





―――――


出会い頭の手刀で沈黙するスネイク。



鮮やかな寸劇。





リチャード。単刀直入に言うわ。力を貸してほしいの。





ギルドの人間が珍しい。詳しく話を聞こうか?





素直に話聞いちゃっていいの? 商売敵なんでしょ?





その敵が頭を下げてやってくる。そういうところに、ビジネスチャンスが転がっているものさ。





……はずんでくれるんだろう?





現金ね。その方がこちらも助かるけど。





今回お願いしたいのは、ギルドの内部の調査なの。正直、ギルドの人間には頼みたくない。





ほう?





ギルドの上層に子爵がいるのだけど、彼から最近依頼が増えているのよ。





その内容はありきたりなもの……やれ護衛だとか、やれ素材の採集だとか。それはいいんだけど――





――依頼を受けて、帰ってこない請負人が何人もいるの。





事件じゃない。なんで大事にならないの?





任務途中でいなくなるのは……本人の意志にしろ、そうでないにしろ、珍しくないから。





ただ、その割合がおかしい。普段の5倍は失踪者がいる。


眉をひそめる面々。



……匂いますね。





帰ってきた請負人に話を聞いたんだけどね。誰も彼も、心当たりはないって。ごく普通の依頼だったって……





回りくどいことをせず、その子爵を問い詰めればいいじゃないか。





今は確証がないから……権力者に睨まれるのはギルドとしても困るわ。





なんとか……隠密に調査したいの。





ようようよう嬢ちゃん。そいつぁつまり、俺たちを当て馬に使おうってことじゃねえか。仮に捕まっても、後腐れがないってことじゃあねえのか!?





ご明察。その通りよ。





リスクはある。何か面倒に巻き込まれても、助けてあげられないかも。でも、なんとしてもやってもらいたい。





わたしにできるのは、報酬を弾むことくらいしかないけど……引き受けてもらえないかしら。





…………





――2千万ゲルンでどう?





ワオ。4人で割っても、1年は仕事しなくてすむ額じゃない。





1千万ゲルンでいい。





え?





リチャード!!そりゃないぜ!取り分が減っちまう!!もしかして、もしかして俺を海に捨てて取り分を増やそうとかそういう、うわああああ





このやかましいのは放っといていいからね。





え、ええ……でも、どういうことリチャード?





その代わり、別のものをいただく。





そうだな……ギルドの“顧客リスト”。爵位持ちで、ギルドを利用したことのある者の一覧をいただこうか。





ふ、ふざけないで! 個人情報じゃない! 誰が、そんなもの……!





わたしにもよくわかりません。そんなリストが、1千万ゲルンを引き換えにしてまで欲しい物なんですか?





なる。正確には、これから……なる。





俺たちは一匹者だからな。そういうお客さんの情報が何より重要なのさ。





どうかな、委員長さま? 差額1千万は悪い話じゃないと思うが?





その条件なら、引き受けてもいい。





こ、この、弱みにつけ込んで……誰が……共犯者じゃない……そんなの……





ともにリスクを背負ってくれると、ありがたいんだがなあ……?





――――――





ええいもう! わかったわよ! それで手を打つわ!





交渉成立。詳しく聞こうか?


続く
