呪圏が晴れたそこには、朽木が仰向けに倒れていた。その表情はどこか満足そうですらある。
全く身勝手な人間だ、と溜息を吐きたくなる気持ちを抑えた。



……と、そっちに行く前に、ちらっと緋奈子ちゃんの安否を確認


緋奈子はというと、あたりの様子を驚きの色を浮かべながらきょろきょろとみている。
呪圏が晴れた様子が物珍しかったのだろうとわかるだろう。
それからあなたの視線に気が付くと、ハッとして少し迷った後、小走りで近づいてくる。



きーやん!だいじょぶ?怪我とか、えっと……


近づいて、開口一番そう問う。



心配には及びません。……しかし、あのような形であなたに助けてもらうことになるとは、思いもよりませんでした


近付いてきた緋奈子ちゃんを静かに迎えよう。



やはり、あなたの持つ力は底知れないな


と、くすりと微笑む。



えっ


と、その言葉に少しぎょっとして足を止めた。



ええと、いや、うちもよくわかんなくて!


と慌てた様子でまるでなにか言い訳でもするかのように両手をばたばたと振る。



全然うまく動けないし、ほんと何もできないって思ってめっちゃ悔しくて、でもなんかできなかって必死になったら……なんか、つながった?感じ?っていうか……!


と、本人もよくわかっていない感覚をどうにか言語化しようとしているのか、要領を得ない説明をしつつ唸っている。



よくわかんないけど、でも、……ちょっとでもさ、助けになれたなら、……よかった


緋奈子は安堵したように微笑んだ。
慌てたり照れたりと目まぐるしく表情を変える緋奈子ちゃんを見守り、ぽつりと



その意気は祈雨にしっかり届いていますよ


と零す。



やはり、刃を交えるよりは、こういった関わり方が好ましい。……そう機会が多いことも、考え物ではあるが





と独り言のように呟き……朽木さんの方に目を向けよう。


朽木は、生命点をすべて失ったため力なく倒れていた。
が、瀕死というよりは、むしろ満足して寝転がっているような印象を受けるだろう。



意識…はあるんでしょうかね?





そうですね!失っててほしいとかなければあります!





では起きててもらって!緋奈子ちゃんの前に立ちつつ、倒れ伏している朽木さんに近付いていく。





見事なり、廻鴉の屍よ。……私は、<理想郷の思想を外道と見做すが、お前の腕前は賞賛するほかない


と見下ろす感じで言い放つ。



……そいつァ、光栄だ。雨龍の


倒れたまま、目だけを祈雨に向ける。



だが、そいつぁこっちの台詞だな。魔法使いといえば、己の魔法とやらに感けて、こちらの速さにゃとてもついてこれねぇもんだと思っていたが……いやはや。やるもんだ


くつくつと可笑しそうに笑ってから、片方の眉をちょいと上げる。



殺さねぇのか





殺しても死なぬだろう、〈永遠〉は。それに、死骸を喰らう嗜好はない





ふわーっとRPしてしまったが、今回の朽木さんは死なないルートですよね??





死なないですね!このシナリオでは彼を永遠としている断章及び禁書は編纂できないので、とどめをさしても生き返りますね!





はぁい!





逆に言えばとどめを刺しても何の問題もないです!





ふふ





まぁな


殺しても死なない、という言葉にはさらっと答えた。そして小さく笑いながら



そいつは助かった。今までいろいろと”死に方”を味わってきたが、食われたことはなかったからな。さすがに喰われるのはあまり気分が良くはなさそうだ





……あと一息興が乗れば、


と不意に祈雨丸の口が怪しく歪んだ。



人だろうが鳥だろうが、吝かではなかったがな





しかしながら、


とここで再び祈雨丸の顔は穏やかな微笑みに戻る。



それは今望まれておらぬゆえ、祈雨は己に課された使命をただ果たしただけの事





……さて、朱華の宝、その断片を返していただきましょう





と手を差し出す…





では、その言葉をじっと聞き、





おお、怖い怖い


と呟く。
しかし言葉とは裏腹に、顔はどこか愉快そうでもあった。
そして何気なく上体を起こす。
胴は今しがた裂かれた傷が、しかし揺らぐようにして消えかかっている。
それを気にした様子もなく、ひらりと手を広げた。



ほらよ。ここまで完敗して、持ち逃げしようなんざ思わんから安心しな


そう軽い調子で言うと、手の上に断章<照らす>が現れた。



ホラーゲームだとここで腕を掴まれてもろとも死にに行く奴……





wwwww
手ずから受け取らなくても、こう断章がひらりと舞い上がって祈雨様のもとへ~とかでもいいですからね!!ww





ふふww





……その義は、間違いなく人間のそれですね





と憐れむような惜しいような微笑みを浮かべ、ふわりと断章を受けとる!





はい!
では、断章<照らすのステータスを公開します


断章〈照らす〉
攻撃4,防御3、根源3、魔力7
特技:《追憶》
【魔剣召喚】《追憶》
【燐寸】装備
【魔棘】装備



ほう…!
まぁ、うん、あんまり好きじゃない文字は見える!





ふふ





とはいえ……とはいえなんだよな……騎士と再生だけどうにかなれば後はそこまで困らない……
魔剣か、魔棘……
ちなみにいま何サイクル目でしたっけ!





5サイクル目ですね!
次が6サイクル目で、残るHOは禁書です!





んんーーーーー、あ、まって?
燐寸の、炎で判定するとき+2ってのは代用判定でも適応でしたっけ?





そうですね!《炎》を『使って』判定を行うときで、指定特技が《炎》のとき、という言い方ではありませんので、《炎》で判定するときすべてに適応と考えてます!





うおお…そうか……火花の通りがぐんと悪くなる……
あと、これまだ非公開なら構わないのですが、禁書の領域はどこになっていますかね?





『夢』です!





りょうかいでーーーーーーす!
燐寸を剥奪します(思わぬ伏兵





ふふ 了解です!
ちなみに、ドラマシーン中であれば剥奪した蔵書の入れ替えは自由にしてOKですので!





お、そうなのですね…!





ですよ!どっかに書いてあった気がする





そうかい?


と、「人間のそれだ」というあなたの言葉は特に意に介した様子もない。



そのように視えます


と、手にした断章を懐にしまい込んだ。



私には私の任がある。あなたの事はいずれ、隻眼の鬼が討ちに行くことでしょう


と、挨拶をするかのように告げる。



その際は、主従共に





そいつは楽しみだな


と、しかしその言葉にも朽木は笑う。そして



主従、ね


と少しおかしそうに笑った後、こう続けた。



ついでだ。良い死合いをやらせてもらった礼をもう一つさせてもらおうか





あいつは正確にゃ、俺の従者ってわけじゃねぇ。むしろ、俺のほうが従者役をすることが多いが……、まぁそれはいい。あれの名は『玻璃』。俺を<永遠>にした魔法使いってやつだ





ふふふ、でしょうね!





俺は正直なところ、もうその断章にも、禁書にも興味はない……というよりも、ああも綺麗に負けたうえでしがみ付くような恥を晒すつもりはねぇ。だが、あいつは違うだろうよ





誰ぞの庇護下にもないとなりゃ、ここぞとばかりに掠め取りにくるだろうさ。まぁ、正直なところ玻璃は戦いに関しちゃ素人だ。当人も理解している。目を光らせておけば、無理をして奪い取りに来ることもないだろうがな





……


その言葉に思わず顔をしかめる。
恐らくは、永遠だの断章だのと魔法用語が飛び交うこの会話の真意を、緋奈子が真に理解しているとは考えていないが……
舞扇を朱華に返す、彼女に誓ったその約束を違えることに他ならない。
朽木の言葉を理解し、



……忠告、感謝する


と返答した。



PCは苦い顔してるけど、PLは何だかんだの演出を既に考えていたのだった。
残りのHO開けてみて、GMがオッケーすれば多分解決する(といいな!)





ほーう!なんだろう!


朽木はその言葉には肩をすくめて見せる。
そして無造作に立ち上がった。
先ほどの傷は痕があるものの、それを気にした様子もなく踵を回した。



じゃあな。次、お前さんと死合うのを楽しみにしてるぜ。……ああ、楽しいな。やっぱりこうでなくちゃあ面白くねぇ


少し振り返って、上機嫌に笑う。



御免被る


と鼻で笑う。



お前の娯楽に付き合う暇はないが……どうしてもというのであれば、次は百鬼夜行の嵐の刻に来るがいい





容易く死ねぬ外道同士は、然様な夜に死合うが似合いよ


その言葉に笑みを深くし、そして音もなく朽木は姿を消した。



その姿を見送り、そして、意を決したように緋奈子ちゃんを振り返る。ぞ……


その会話をじっと黙って聞いていた緋奈子は、顔を上げてあなたの目を見返していた。
正直なところ、彼らの言葉の意味を理解していたとはいいがたい。
それでも、諸手を挙げて歓声を上げるような状況ではないことは雰囲気から理解していた。



……あの、きーやん……、ええと……





……すみません、あまり長話をするつもりはなかったのですが……





この通り、舞扇の一部は取り返しました。あとひとつ調査を残していますので、こちらは暫くお預かりするとして……


と、つとめて優しく語り掛ける。



事実を改竄していたあの男の魔法は、今解かれました。これで綾緋さんをはじめ朱華家の人間たちがあなたを疑う事はないでしょう





……!


その言葉に息をのむ。



……そっか


ぽつりと呟き、そして長く長く息を吐いた。



……よかった


かすれるような声でそう零した。



……ありがと、きーやん


そう、眉を下げ、目じりを震わせる。
今にも泣きそうで、しかし涙はこぼさずに笑った。



じゃあ、あとは舞扇だけかー


気を取り直すように、努めて明るい声を出す。



ええ、本当に……よかった


と彼女の瞳を見つめた。



舞扇は……必ず、必ず朱華へとお返しいたします





……ただ、その前に、緋奈子さん、


と、手離し難い思いを堪えて問う。



一度…家に、帰られますか?


遠く離れたどこか。
あの場から退いた朽木は、一人あくびを噛み殺しながら「……そういや」と独り言ちる。



あの娘、弱い弱いと歯牙にもかけてなかったが……、まさかあの場で干渉してくるとはなァ。ありゃあシノビの感情のつながりのようにも見えたが……いや、それにしては……


としばらく考え、小さく口角を上げた。



あの雨龍が目を掛けるのも、まぁ、わからんでもねぇな


~おまけ:雑談によるラッパーMIYABI~



朽木、“愉快そう”が多いなぁ・・・・・・・・・・・・・(語彙力のない図) ちょっと楽しくなっちゃってるんだろうな…………





そういう祈雨丸、なんだか韻を踏んだような言い回しになってしまって、でも他に言い回しが見当たらなかったのでこのままになっているラッパーMIYABI





wwwwwwwwww





祈雨様の台詞、韻を踏むの好きなんですけどラッパーって言われると笑っちゃってwwwwwwwwwww





死合うが似合いYO





漢詩だって韻を踏むんだから問題ないですYO!!!!





いやもう語彙がwwwwふふwwww





問題ないやったぜ!!wwww





というかラッパーという発想はなかったwwwww





いや雑に韻を踏んでるなって……wwつい……w


背景画像
NEO HIMEISM 様
https://neo-himeism.net/
