2020年?月?(?)7:09 AM
2020年?月?(?)7:09 AM
今日は変な夢も見なかったし、
なんの変哲も無い朝……になるハズだった。



ん?


自室から出ようとした俺は、
急に妙な違和感を覚え、
ドアの前で棒立ちになった。
そしてフと視線を下ろしたとき、
足もとに1枚のトレカが
落ちていることに気がついた…。



こりゃミチコのトレカだ。
一応、拾っておいてやるか。
やれやれ…。


とりあえずトレカをポケットに突っ込み、
俺は自室を出た。



…………。





…………。


朝食の時間。
母ちゃんはテレビ、親父は新聞に夢中。
そんな中、俺と妹のミチコは、
訝しげな表情でお互いを凝視していた。



な、なによお兄ちゃん…。
人の顔じろじろ見て…。





お、お前こそまじまじと…。
一体どうした?


ミチコはしばしの沈黙の後、ボソリと呟いた。



な、なんか…
既視感があるの





きしかん?





うん…デジャヴってやつ?





ほ、ほほ~~
…なるへそ。
それ聞いたことあるぞ。





も、もしかして
お兄ちゃんも!?





いや俺は…
そ、その逆かも?





逆…? あ、ああ~、
もしや未視感…
“ジャメヴ”ってやつ?





ん?写メブー??
…まぁよく知らんが、
なんとなく違和感感じるんだよ。
その…家の間取りに。





間取りに違和感!?





あ、ああ…
それで、実はお前の顔にも
ちと違和感が…





なんですって!!!


ミチコは鬼の形相で前に乗り出してきた。
俺は慌てて言い訳。



いやなんでもありません!!!
そんなに美人だったっけと
思っただけであります!!!





え!!!!!





は…はははは!あ、そうだ!
ト、トレカ1枚落ちてましたぜ旦那…!


俺は素早く、
さっき自室で拾ったトレカを妹の目の前に置いた。



あ…ああ…
これデジャヴだ





ん?
これってデジャブっていう
カード名なのか?
…随分タイムリーだなぁ。





ううん…そうじゃなくて、
今もの凄い既視感増したの…
怖いくらいに…
い、一体なんなの…?





…う、う~ん、ま、人生なんて
深く考えるだけ
大抵取り越し苦労だ。
あんま思い詰めんの止めようぜ~。
じゃ、学校行ってくら。


とりあえず俺は、
電気あんま食らわなくて良かったと思い、
家を出た。
学校に到着し正門を通過した瞬間、
チャイムがけたたましく鳴り、
友人のユウタが焦った表情で俺を見た。



お、おい、
本鈴鳴ったぞ。





やべーなオイ。
一限目おっかない英語教師だよ。
さっさと校舎に入ろうぜ。


俺らは足早に校舎に入り、上履きに履き替えた。
そして5メートルくらい歩を進めた…その時。



お~いハルト?
何処行く気だ~?





…何処って、教室だよ。





…おいおい
オレらの教室は一階か?





……。





……そ、そうだな。
一階じゃぁないよな。
何やってんだオレ…?
……で、でも。


それでも脳内の3割くらいは一階だった気がしてる。



…3割?
はっはっは、面白い。
じゃぁその3割の思い出
ここでジックリ
聞かせてくれない?
どうせもう遅刻だしさ~。





いや…具体的にはどうも…
ただ感覚的には…





ほ…本気かハルト!?
お、おまえ病気じゃ…。





…だ、大丈夫大丈夫!
細かいこと気にすんのヤメヤメ!
さ、三階までレッツラゴー!





…二階だよ教室は。





……へ?


その瞬間、自分じゃ到底制御できない何かが
俺の中で…いや外で…?起きていると思った。
しかし考えてみれば人生この方、
何かを上手くコントロールできた試しなんて
殆ど無い。
こんな時は、誰か凄い奴にでも
なんとかしてもらおう。
学校の先生?お医者さんか??
いや、こんな時は大抵……。



ハルト、どうしたの?
さ、教室はこっちよ。





あ、あら?
ミハネも遅刻か?





なんか迎えに来た方がいい気がして。
ハルト、ちゃんと歯を磨いてきた?
教科書は持ってる?





あ、あはははは…
ってオイ!





プフッ…。


次回へつづく。
