無心で放たれたハルの抜刀は、リザを飛びのかせただけだった。
表情を読みとれないリザだが、明らかに驚いている。この毒霧のような場所で、反撃してくるとは思いもよらなかったみたいだ。



!?


無心で放たれたハルの抜刀は、リザを飛びのかせただけだった。
表情を読みとれないリザだが、明らかに驚いている。この毒霧のような場所で、反撃してくるとは思いもよらなかったみたいだ。



まサか……


ギリギリ立つのが精いっぱいのハルに注意を向け、リザは独り言を漏らす。



ァ゙…………





いヤ、アり得んな。


力なく倒れるハルを見て、リザは何かを否定した。そして床でうずくまり苦しむロココへ歩を進める。



アルパガスよ。
覚悟シろ。





ハルさ……


意識が朦朧とするロココにも、リザがすぐそこまで近付いてきているのが分かった。だが、身体に力が入らない。
何故、何者か分からぬリザが現れ、そして襲われているのか? 何故自分だけ標的にされているのか? アエラスとは? アルパガスとは……全く見当もつかなかった。
体内の蠢く不調は考える速度をも鈍らせていく。
ロココが諦めかけた刹那、身体の芯に一筋の光が射す心地を感じた。



逃……げ、て……


ロココは気付かなかったが、アデルがすぐ後ろまで這い寄ってきていて、ロココの背中に右手を当てていた。中指には治癒指輪が光を放っている。
ロココの目に再び光が戻る。体内の穢れが僅かだが浄化されたような心地を覚える。その僅かな光が四肢に力をもたらす。



う、っく……
な……ぜ、
何故僕を?





ユデアの遺物……
ソの複製品か。
目障りダ。
先に逝クか。





やめろっ!
これ以上
僕達に構うな!





うわぁっ!!


標的をアデルに替えようとしたリザに対し、ロココは新しい刻弾を具現化しようと試みた。だが、直ぐさまリザはそれに反応し、毒の霧をロココの周辺に再度発生させたのだ。



アルパガス……
又も調和ヲ乱ス気か。


濃密な霧がロココを包み込む。反撃を試みたロココだったが、喉元を押さえ前のめりにうずくまる。
アデルが持つ導師の証――治癒の指輪は、対象者の生命力を向上させる物。ロココはゆっくりとだが回復傾向にあった。だが今はそれを上回る有害な霧に包まれている。
気力を振り絞ったハルも、僅かに回復させれたロココも倒れた。その現実を思い知らされたアデルも既に身動きが取れぬほど消耗しており、僅かに開いた片方の目も静かに閉じようとしていた。



ヌグッ!?





何故立てル……
とッくに気力も体力も
尽きてイるハず!?





ァガアッ!!
馬鹿な、
信じラれん!?





オ、おのレぇ……
ドうなッている!?





てめぇはよぉ~、
最初から最後までよぉ~、
何言ってるか
分かんねぇんだよ。





まサかオ前は
運命の者・ミラか!?
それならば、





知るかっ!!


