今日は、うちの店特有の大特価デー。俺と赤ずきんは勿論、普段深夜働いている彼も、何時もより早く出され、セルフレジ二つと合わせて、合計五つのレジがフル稼働している。



俺、はじめておつかいするやつ出て見たかったなぁ





その年で……?





いや、子供の頃の話だよ……


今日は、うちの店特有の大特価デー。俺と赤ずきんは勿論、普段深夜働いている彼も、何時もより早く出され、セルフレジ二つと合わせて、合計五つのレジがフル稼働している。



いらっしゃいませー!





有難う御座いまーす!





またお越し下さーい!


この言葉を、みんな一体何回繰り返したことだろう。それだと言うのに、一人のレジごとにまだ七人近く並んでるって一体何……?



お会計が、三百六十円で御座いますー!





さんびゃく……


女の子は戸惑いながら、首から下げたお財布から小銭を取り出していた。おつかいかぁ、偉いなぁ。とはいえ、この言わば戦場でそんなゆっくりしていては……。



……チッ


うわー、ヤバいよ後ろのお客様やっぱりイライラしだしてるよ。でも、女の子はまだ数えてる途中だし、僕が数えます! なんて言うのも失礼だろうしなぁ。けどこのままじゃ女の子が怒られちゃうかもしれないし……うーん、どうしよう……。



おい、お嬢ちゃん! 金も数えられんのかい!!





……ご、ごめんなしゃ……。





ヤバい! お客様近づいて来た。どうしよう


お客様は女の子の隣まで歩いてくると、わざわざ腰をかがめ、女の子の目線に合わせて睨み付けた。
そして、そのままの姿勢で小銭に指をさす。



お嬢ちゃん、六十円無いから、これで出しなさい。





う、うん……


女の子はお客様に言われるがまま、四百円を出し、お財布に残りのお金をしまった。



四百円でお預かりします!


お釣りを返すと、女の子は逃げるように去って行った。そりゃあ、強面の男の人から怒鳴られたら仕方ないよな……とはいえ。



いやぁ、皆さん待たせてすみませんでしたね





いえ、大丈夫よ





従業員なので!





さっき私の前にいましたよね、前どうぞ





いや、俺も急いじゃいないから、構わんよ


怒鳴ったお客様があの子の代わりに謝ってること、あの子は知る由も無いんだよな。
何時かあの子が成長したら、きっとこのお客様の優しさが伝わると良いな。
