自室で寛ぐアルン。その胸につけたブローチが外れ、ひとりでに浮かび上がる。やがてそれは、擬態を解き、竜の姿となった。



「・・・・・・」


自室で寛ぐアルン。その胸につけたブローチが外れ、ひとりでに浮かび上がる。やがてそれは、擬態を解き、竜の姿となった。



「旅だったか」


その竜は出生のよく分からない、謎多きドラゴン。その情報を知る者は一切おらず、一体どんな能力を持っているのか、全く分からぬ存在。



「えへへ、みんな邪神になるのー」


とても楽しそうにはしゃぐアルン。まるで幼い子供のよう。



「そうすれば、争いなんて起きない♪」





「だがそうなれば、邪神――竜同士の戦いが始まるのではないか。それこそ1000年前の繰り返しになる」





「なら頂点を決めればいいの。私が支配するよっ」





「その結果、神龍は自らを犠牲に古代龍を封じることになった。何をしようとも、争いはなくならぬ」





「もー、うるさいなー! それよりも計画はどうなっているの!」





「順調に動き出している」





「ならなんであの男は店に通っているの? クラウドは失敗したんじゃないの?」





「お前の父親の記憶は確かに消した。通っているのは偶然だろうて」





「嘘だッ! あいつは、あの男は父親なんかじゃない。あの男を、早く殺せ。殺せよ?」





「そう急かすな。未来が揺らぐ。貴様の姉が助かる為には、一年を待つ必要がある。それまで、存分にあの男を利用しようではないか」





「・・・・・・分かった」





「アルンー、入るよー?」





「はーい♪」


邪悪なる龍は再びブローチへと戻り、日常は続いていく。
