美咲に歩幅を合わせ、道路側を歩いていた敬一が足を止めた。
完璧な敬一の所作に美咲は再び腹が立って来たが、何も言わずに同じように足を止める。
美咲に歩幅を合わせ、道路側を歩いていた敬一が足を止めた。
完璧な敬一の所作に美咲は再び腹が立って来たが、何も言わずに同じように足を止める。



……この辺りで良いかな?


敬一が視線を向けた先には結月と明彦が向かい合って立っている。
彼が今から何をしようとしているのか美咲は悟り、小さく呟いた。



……盗み聞きなんて悪趣味


しかしそう言う美咲の視線は敬一から外れており、その場から動こうとする様子は無い。
又口調にもそこまで棘は無く、彼を咎めようとしているようには映らない。
その美咲の様子を見ながら敬一は悪戯っぽい笑みを浮かべた。



旗仲さんがこのまま帰るって言うなら俺も従うけど?


そう言う敬一を美咲は思わず睨んでしまった。



ユズちゃんと明彦君の様子は私も気になっていて、出来る事なら見守っていたいなんて……わかっている癖に


敬一のこういう所が美咲はどうも気に入らない。
しかしそんな美咲の心情等気にする様子も無く、敬一はサラリと言った。



1人より2人の方が罪悪感が軽減されるって……そう思わない?


言いながらもその視線は美咲から外れている。
お陰で彼がどんな表情をしてそう言っているのか、美咲にはわからなかった。
だからこそ彼が今……本心から話しているのが何故かわかった。



神谷君ってさ……凄くお節介だよね。ま、私からするとどうでも良い話だけど





さっきだって2人に嫌われそうな対応取りながら結局2人を助けたし、こうして本音を言葉にしている時は絶対こっちを見ない


静かに返す美咲を敬一はまだ見ない。



それからすっごく不器用だよね。
馬鹿みたい


続ける美咲と敬一はやっと視線を合わせた。
面白がるような表情を浮かべつつ、言う。



それは褒めてるのか貶しているのか……どっちかな?





さぁ、自分で考えたら?
どうせ私の表情から全部読めるんでしょ


言いながら美咲はそっぽを向いた。



本当にムカつく。
だから絶対素直に言ってやらない


本当はそんな敬一の事を少し眩しく思う自分が居る。そしてそれが悔しい。



本当嫌い


悔恨の想いはそんな言葉に集約された。



そんな事ばっかり言ってると……1人だけ悪者だと思われても知らないから


小さく呟いたつもりだが、敬一にはしっかり届いたらしい。



旗仲さんこそ……不器用でお節介だと思うよ。
まぁ俺にとってはどうでも良い話だって言うんだろうけど





フンッ


美咲は再びそっぽを向いた。



でもまぁ……有難う。
旗仲さんは……優しいね


そう言う敬一が穏やかに笑っている事に美咲は気付かなかった。
