独り青森の地で絶叫するのはロープで縛られて、逃げられないように木に括りつけられた花蓮である。



なななな何この状況・・・!!!??


独り青森の地で絶叫するのはロープで縛られて、逃げられないように木に括りつけられた花蓮である。



うるせー、夜中で近所迷惑だからあんまぎゃんぎゃん騒ぐな。





いくら囮だからってここまでしなくても良くない!?





あー・・・そりゃポニーの趣味だ。





私を変な性癖持ちにしないでください。


当の煌炎たちはというと、茂みに身を隠して花蓮の周囲の様子を伺っていた。



てゆーか、なんでおっさんたちもいるわけ?





狐王皇家の兄ちゃんといるのが一番安全だと思ってな。
正直、俺の印も消えたわけじゃないしいつまた襲われるかわかんねーからな。





俺は矢田坊が心配でついてきました。





・・・にしても狐王皇家の兄ちゃんやるなぁ。
あれでも年ごろの娘だろーに。





おじさん、『あれでも』っていうのは失礼でしょ!?





さすがに花蓮さんが不憫に思われてきました。


結構時間がたったので一度休憩のために花蓮のロープを外しましょうと賽が言い出したところで、周囲の空気が一変した。



来たな。





私の自由時間~・・・。


その一変した空気に、その場にいた全員に緊張が張り詰める。



・・・あれ?
獲物以外がたくさんいる。


以前のように容赦なく刃が舞うかと思うと、意外にも男が姿を現した。



・・・あんたが鎌鼬かい?





そうだけど・・・。





さっきみたいにいきなり襲ってこないんだな。





みんな逃げてくから追っかけてるだけだよ。
あんたたちは逃げないから。


煌炎の質問に男は淡々と答える。



あんたなら答えてくれそうだ。
死って何?


そう零すと男はすさまじい速さで煌炎の懐に入り込む。



っ・・・!!


煌炎はかろうじて反応するがよけ切れずに、首元が微かに切れて血がにじんだ。



あの煌炎さんが反応しきれてない!?





煌炎様!!
大丈夫ですか!?





おいおい、質問に答えようにもこの仕打ちじゃぁ答えられねーよ。





青藍さんが教えてくれたんだ。
相手は痛めつけてからじゃないと死について本当のことを話してくれないよって。





あの野郎、なんてこと吹き込んでくれてんだ。





だから今までの奴も手間だけど痛めつけてきた。
だけど、みんな何にも教えてくれないし、しゃべらなくなっちゃうんだ。





な、なんて奴だ・・・。





く、狂ってやがる。


その会話を聞いた男二人は、罪悪感もなく語る彼の残忍さに顔を蒼白にさせてつぶやいた。
そんな中、意外にも弁解をしたのは賽であった。



・・・いや、あの男は純粋なだけです。
純粋な探求心、そして言われたことを忠実に守っているだけ。





まるでまだ小さな子供みたい・・・。





だから、避けないで大人しく受けてよ。


彼が繰り出す斬撃はまさに突風のようで、その姿は容易にはとらえられない。
着実に煌炎は浅いなりにも傷を受けていった。



っ、このままでは煌炎様が・・・!!


賽は助太刀に飛び出そうにも、その姿を完全にとらえられないでいた。
はたから見れば、独りでに煌炎が傷を負っているように見えるのだ。
それほどまでに、鎌鼬の出す斬撃は素早く鋭いものであった。



ねぇ、死ってなあに?





くっそ、あほみてーにはえぇ。


今度は剣を折らないように細心の注意を払いながらも、斬撃のいくつかを受け止めていく煌炎。
その激しさに時折火花が散る。



あ、あれ?
煌炎さんの剣にも血がついてない?


花蓮の指摘は的を射たものであった。
煌炎の傷は浅いものばかりであるが、その割には周囲に飛び散る血の量が多すぎる。



っ、だからやりにくいんだよ。


そう、煌炎と刃を交える度に鎌鼬は煌炎が負うもの以上に傷を負っていた。
それもそのはず、この斬撃を繰り出しているのは彼の手と足なのだ。
無論、煌炎が斬撃を受け止めるごとに彼の手足は傷を負っていった。
しかし、男は傷など気にする素振りもなく突っ込んでくる。



っ・・・!!!


煌炎が反撃のために剣を横に薙いだ時であった。
思った以上に、勝負があっけなくつく。



あ。


