光の巨人兵に一斉攻撃を仕掛けた俺とシュー、サリットの三人は、光の巨人兵にスマッシュヒットを浴びせた…はずだった。

　刹那、光の巨人兵の体全体が透明と化し、俺たち３人の攻撃は空しく空を切った。そして敵の胴体部分をすり抜け、向こう側へと移動させられた。

　振り返ると、透明と化していた光の巨人兵は実体化し、巨大なウォーハンマーを俺たちの中心へと振りかざそうとしていた。

　三方向に散った俺たちのいた場所にウォーハンマーの一撃が炸裂し、洞窟の地面の一部を削り取ると同時に、大量の砂煙が辺りに充満した。

　光の巨人兵の横方向の一撃が、辺りの砂煙を一瞬にして吹き飛ばし、周囲の状況が一気に明らかとなる。

　砂煙があがり、敵の視界もなくなったと油断したシューに向かって、敵はウォーアンマーを振りかざして攻撃をしかけた。

　それを、見えないながらも空気の流れを感じ取ることで、瞬時に敵の攻撃形態を悟ったサリットがシューに飛び掛かり、敵の攻撃をすんでのところで防いだのだった。

　シューを叱りつけるサリットの瞳には、大粒の涙が浮かんでいる。

　母の…いや、今は敵である村長の声が洞窟に木霊する。

　体制を立て直した俺たち３人は、再度光の巨人兵へ突撃を仕掛けた。

　だが…

　２回目の突撃を仕掛けた俺たちだったが、１回目と同じようにスマッシュヒットが決まる直前に敵の体は透明化し、俺たちはまたしても敵の反対側へと誘われていた。

　その時、周囲を見渡していたサリットが言う。

　彼女が指差した方向を見ると、光の巨人兵を取り囲むように配置された四方の宝玉から、光の巨人兵に対して魔力が供給されていた。

　短曲剣（マインゴーシュ）を手にしたサリットの姿が、視界から遠ざかっていく。

　それを確認した巨人兵が、サリットめがけて攻撃を仕掛けようとした、その時…

　シューが後方に退いたのを確認した俺は、頭に浮かんできた詠唱呪文を唱える。

　詠唱と共に光り出した剣は、俺が詠唱を終えると魔法の力で紅蓮に染まっていた。

　その剣を頭上にかざし、俺は叫んだ！

　次の瞬間、俺の剣から無数の炎柱が解き放たれ、巨人兵の周囲を取り囲み、その行く手を阻んだ。

　巨人兵の動きが止まると同時にサリットから放たれた短曲剣が宝玉の１つにぶつかり、粉々に砕け散る。

　同時に巨人兵は苦痛にまみれた叫び声をあげ、その元凶を作り出したサリットに近づこうとする。

　だが…

　俺は身体の底から湧き上がってくる力を剣に注ぎ込み、巨人兵の周囲に張り巡らせた枷の力を更に強化させた。

　サリットに近づこうとした巨人兵に、俺が作り出した炎柱が容赦なく業火を放ち、その行く手を遮る。

　そうこうしている間に、サリットは２つの宝玉の破壊に成功していた。

　そして、宝玉が残り１つとなった、その時…

　宝玉から供給されていた魔力が一瞬のうちに消え去り、炎柱に行く手を遮られていた巨人兵も跡形もなく消え去った。

　サリットが指差す先を見た俺は、思わず叫んだ。

第１１話　に続く