そう言って嬉しそうに煌炎に飛びついた。



ずっとずっと待っていたわ!!
あたしの魅了に打ち勝つ強靭な心の持ち主!!


そう言って嬉しそうに煌炎に飛びついた。



か、喰蝶様!?





き、奇跡が起きましたね。





あら、あんたたちそんなとこにいたの。
ちっちゃいから気づかなかったわ。
いつまでその姿でいるつもり?


そう言って喰蝶は煌炎に抱き着いたまま手を2匹にかざすと、2匹はたちまち煙に包まれる。



いつまでって・・・喰蝶様がでかくて邪魔と言ってあのサイズにしたんじゃないですか・・・。





ったく、とんだ横暴主だぜ。





神使様が大きくなった!?





てか、いつまでくっついてんだ。
寄るな、キモイ、うざい。


そう言って煌炎は擦り寄っていた喰蝶の頬をぐいーっと思いっきり引きはがす。



あん♡
冷たい態度も素敵♡


その瞬間、喰蝶がつけていた首飾りの赤い玉に亀裂が走った。
ピシッ・・・!



あら?





・・・ようやく割れたな。





もしかして貴方、これが目的だった?
まぁ、正直七雄で地方の守護なんかより運命の人探しの方が大事だけど♡





てか、あんた。
さっさと人間どもを解放しろよ。





えーそれは嫌。





・・・それなら切るしかねェな。


鬱陶しくまとわりつく喰蝶にイライラし始めた煌炎はすっと双剣の柄に手をやる。



煌炎さん落ち着いて!!!


今にも剣を振りかざしそうな煌炎に周りもビクビクだが、刃を向けられそうになっている当の本人の喰蝶はニコニコと嬉しそうに笑っている。



やーん♡
切られたいのはやまやまなんだけどぉ、死んじゃったら貴方に会えなくなっちゃうし?
大人しく言うことききまぁす♡


煌炎が現れるほんの直前まで勝気な様子を見せていた喰蝶であったが、
冷たい態度を取られてもデレデレしている今の様子は誰が見ても・・・・。



お狐様が・・・。





ドМだったなんて。





俺たちも喰蝶様の性癖なんて初知りだし。





あのようにデレデレになられるなんて・・・いつもの我が儘お嬢はどこへやら・・・。





聞こえてるわよ。





ひっ、俺達には相変わらずブリザードな対応なんだな。


そんなこんなでひと悶着ありながらも、
喰蝶は最愛の煌炎の命令により、自身が捕らえていた人間を全員解放した。



あ、あなた・・・!





!
美幸(ミユキ)!!





あなたのいない毎日がどんなにつらかったことか・・・おかえりなさい。





寂しい思いをさせてごめんよ・・・セニョリータ。
これからは絶対に君を一人にしない、そう誓うよ。





絶対に、絶対に私を離さないでね・・・!





もちろんさ!!





・・・おい、そこで笑ってる奴2匹。
全員しばくから一列に並べ。





だ、だってあの人・・・ぶはっ。





噂の煌炎様に似ているっていう彼女の旦那様ですよね?





・・・どこが似てんだよ。





本当失礼よね、似ても似つかないわ。





珍しく話が合うな。





あー!!!
おばさんまた煌炎さんにべたべたしてる!!





おば・・・!!??
なにこの失礼な小娘。
まな板はすっこんでなさい。





ど、どこ見てまな板って言ってんのよ!
おばさんこそ、そんなバカでかいスイカぶら下げてたら四十肩ならぬ五十肩になっちゃうんじゃないの!?





あーら、ひがみかしら?
かわいそーね、まな板さんは。
せいぜいパッドで盛る事ね。





こんのババァ・・。





女同士の争いって恐ろしいですね・・・。





うむ、正直関わりたくないがそろそろ喰蝶様には社内に戻っていただかないと。





喰蝶様~。
そろそろ社内に戻る時間だぜ。





え?
もうなの?
せっかく運命の人と出会えたのに??





喰蝶様は曲がりなりにもこの社の稲荷神です。
長時間社外に出られますと、この地方の守護結界が緩んでしまいます。





そーだよ、喰蝶様の神通力がないと俺たちも消えちまう。





えー・・・やだぁ。





そ、そんな。





おい、喰蝶。





ひゃ、ひゃいっ!?


突然、煌炎が自身の名を呼んだので驚きで声が裏返る喰蝶。
そして喰蝶を見つめる目は真剣そのもので、心臓を鷲掴みにされた感覚に陥る。



あんた、親戚の野郎どもを見返してやらなくていいのかよ。





・・・え?





さっきはあんたの褒める点なんて全く見つからなかったが、曲がりなりにも稲荷神としての役割は全うしていた。
だから、この地方では争いごとは起きてない。





・・・。





その点だけはよく頑張ったな、褒めてやる。
狐王皇家として礼を言おう。





そう言えばあなた煌炎って呼ばれて・・・・。
はっ・・貴方様はもしかして孤王皇家の第4御子息様!?





喰蝶様、今更気づいたのですか・・・。





だからこそ、あんたにはこの地方でこれまでのように役目を全うしてほしい。
そして、半端者だと笑った他の稲荷神の親戚どもを見返してやれ。





煌炎・・・様。


その言葉を聞いた喰蝶はくるりと踵を返して、社へと一歩を踏み出した。



孤黒(ココク)、孤白(コハク)、何とろとろしてんの。
社に戻るわよ。





!





はいっ、喰蝶様!!





あんたたちが消えちゃったら、あたしの世話役がいなくなっちゃうしね。
それに・・・。





・・・?





我が儘は卒業だわ。
そして、毒舌皇子からあたしのいいとこ一つでも多く言わせてやるんだから!





・・・まぁ、あんま期待しないでおくわ。





そう言ってられるのも今のうちだからね!!


そう言って喰蝶と2匹の神使達は社の中へ姿を消したのだった。



しかしまぁ嵐のような方でしたね。





嵐のような方でしたね、じゃねーんだよ。
ポニーが失敗したせいでうざいのがひっついてきたじゃねーか。





まぁまぁ。
終わりよければすべてよし、という言葉があるじゃないですか。





てかお前、操られたふりしてただろ。





あ、ばれました?





え、心配したのに!!





あはは、面倒だったんで内側から崩す戦法で潜入しようとしたんですが。
ご心配をおかけしてすみません。





うざ。
・・・それに、終わり良ければって・・・こいつらどーすんだよ。


煌炎が指さした方向には魅了が解けて現状把握ができず、パニックになった男たちがうようよとさ迷っていた。



・・・これは、終わり良くはないですね。


賽の笑顔が引きつっていると、先ほど感動の再会を果たした村娘とその旦那が話しかけてきた。



この度は本当にありがとうございました。





あー、そういやそうだったな。





ここは僕たちに任せてください。
せめてもの恩返しです。





いいのですか?





貴方たちは何か目的があって旅をしているのですよね?
このような所でこれ以上ご足労頂くわけにはいきません。





安心してください。
僕たちの『愛』の力があれば容易いものですよ!





あなたったら・・♡





・・・これ以上再会した2人の邪魔しちゃ悪いし、お言葉に甘えさせてもらおうよ。





そうですね。


こうして七雄狐の嫁入りの魔具を無事破壊し、煌炎一行はこの村を後にしたのだった。



そういえばなんですが・・・。





んだよ。





ここいら一帯って、宿屋なかったですよね?





あ。


結局宿屋は見つからず、花蓮が寄ってくる虫にひぃひぃ言いながらも野宿で一晩を明かしたのだった。
