すぐに振り向く賽であったが、悲しくも主の姿は見当たらない。



・・・・!!!!





?
お兄さんどうしたの??





何か煌炎様がやらかしてしまった時のような寒気が・・・って煌炎様!!??


すぐに振り向く賽であったが、悲しくも主の姿は見当たらない。



せめてすぐにふらりと消える癖をどうにかしてもらいたいものです・・・。
普段から気配を消している方なので全く気づけないんですから。





ホントだ!!
煌炎さんがいない!!??
どうしよう、お兄さん。





どうもこうも、探すしかありません。
煌炎様のことですから京都名物の匂いにでもつられたんでしょう・・・。





たしかに煌炎さんならやりかねない。


こうしてようやく煌炎の失踪に気づいた二人は深いため息をついたのであった。



へっくしゅん。





うむ?
誰かがお主のうわさをしているのかもしれないな。





うぜー・・・・。





そうだ、この出会いを機に杯を交わそうではないか。
お主のような面白い奴はわしの兄弟以来初めてだ。





あー?
おたく兄弟がいんのかよ。


店主によってこれ以上酒がでなくなったので、残った最後の酒瓶をお互い注ぎあいながら話し始める。



あぁ。双子の弟がいる。
今は東京に行っているところだ。





東京だぁ・・・?





今の世の中は腐っている、そうは思わんか?





―・・・・。





わしはそう感じておる。
だからこそ領主として民の声を幕府に届けなければならない。
それで弟には使者として東京に嘆願文を届けに行ってもらっているのだよ。





・・・おたく、いい奴なんだな。





なに、領主として当たり前のことをしているだけだ。
実際、動いてくれているのは弟だしな。
本当、自慢の弟だよ。


そう言って注ぎ終わった杯を持ち、前に掲げる。



お主との出会いに。





あんたとの出会いに。


そのままぐびっと両者とも飲み干した。



これでお主もわしの義兄弟だ。
見た所他県の者のようだが、京都を第二の故郷と思ってもらっても構わんよ。





そいつはどーも。





ところでお主の名は…-。


領主が煌炎にそう言いかけた時であった。
店の扉が勢いよく大きな音を立てて開き、半ば転がり込むように何者かが店内に侵入した。



何事だ!!


先ほど浴びるように酒を飲んでいた領主であったが、素早く音に反応し、酔人であることも意に介さず入り口の何者かに歩み寄った。



おまえは・・・!





す・・・すまない兄者・・・、しく、じった。





!?
弟よ、何があった!!??
傷だらけではないか!!





あいつが・・・青藍が、お前たちには失望したと・・・、このまま温い統治のままであれば、地方ごと崩壊させると・・・。





・・・青藍・・・?





おのれおのれおのれ青藍んん!!!!!
大人しく従っていればこの仕打ち!!!!
我が弟を傷つけた罪、万死に値する!!





兄者・・・。





一族もろとも滅ぼしてくれる・・・。





・・・これは、まずいな。





すまぬ、義弟よ。
わしは用ができた。
狐王皇家の一族を、この酒呑童子が滅ぼすという用事がな。





酒呑・・・童子。
あんたが!


酒呑童子が次の一言を発そうとした時だった。
再び、店の扉が勢いよく開かれる。



煌炎様!!
良かったようやく見つけました!!





煌炎さん、もう勝手にどこかに行かないでよ!!





わぁお・・・、さいっこーのタイミング。





煌、炎?





あー・・・・、改めましてよろしく?





ひょわあああああ!!!





煌炎様!!??


強烈な一撃が煌炎にクリーンヒットし、扉の所にいた賽と花蓮の足元に吹っ飛んできた。



やべ、酔ってて避けきれねぇや。


ぷっと口にたまった血を吐き出し、自分勝手に動こうとする足を何とか調整して酒呑童子と名乗った男に向き直る。



間者か。
よくもたばかってくれたな。





ちょいピンチじゃね?


