社長から何の連絡だろうと電話に出ようとするが、
ふと手が止まる。
なるべく早めに名取と連絡を取りたいが、
あまり遅い時間だと連絡方法を調べる時間も無いし、
相手の都合も付きにくくなってしまう。
社長から何の連絡だろうと電話に出ようとするが、
ふと手が止まる。
なるべく早めに名取と連絡を取りたいが、
あまり遅い時間だと連絡方法を調べる時間も無いし、
相手の都合も付きにくくなってしまう。



となると、今日だけでもバイトを上がらせて欲しいと、社長を頼るべきか


言わずに後悔するなら言って後悔だと、
自分を奮い立たせる。



なかなか電話に出ないから席を外してるのかと思ったよ。店の方はどうだ? 客は来てるか?





昼から店番をしてますが、雨が降っていた影響もあって来てないですね





そうか、それは残念だ。そうしたら綾瀬にお願いがあるのだが





社長。その前に俺から1つ相談させて頂きたいのですが、よろしいですか?





綾瀬から相談か、珍しいな。話してみなさい





友達のためにある人と連絡を取りたいんですが、状況を考えるとなるべく早めに連絡を入れたいと思っています





そのため今日だけでも、バイトを早めに上がらせて頂きたいと思うのですが


社長に自分の想いをぶつけてみる、
どうなるかは後で考えればいい。



その友達は、綾瀬の大事な人なんだよな?





はい。必ず連絡を取って、その人の笑顔を取り戻したいと思っています





そっか。それならこれで上がっても大丈夫だぞ





本当ですか?


社長の言葉で、飛び上がりそうなくらいの嬉しさが
こみ上げてくる。



私も綾瀬の願いを叶えてやりたいと言うのもあるし、私が連絡したのは今日はこれで店を閉めて、綾瀬をあがらせようと思ってたんだよ





元々今日は休みにする予定でいたしな





そう言う事だったんですね。それではお言葉に甘えさせて頂きます





若人よ、頑張ってくるんだぞ。って事で戸締まりをしっかりしておいてくれよな。バイトは7時まででつけとくから





ありがとうございます! さすが社長、尊敬してます!





はは、口が達者な奴だな。それじゃ今日は寄り道せずに真っ直ぐ帰るんだぞ


社長がどこか嬉しそうな口調でそう言い残すと、
電話を切った。



『皇社長は、相変わらず凄いにゃ!』





やはり社長に頼ってよかったよ。今日はこれで店を閉めて良いそうだ





まだ話の途中だし、話したい事もあるからそうだな……俺のうちにくるか?





はい、綾瀬さんがよろしければ。後、ルキア君もね





お、弓月から初めて名前を呼ばれた気がする


弓月も話せるようになって来てるみたいだし、
前進、前進。



ってルキアの声が弓月も聞こえるのか!?





はい。この電気屋さんに入ってから、声が伝わってきていました





『葵ちゃん、元気だすにゃ。亮介は良いやつだし、僕も一緒についてるにゃ!』


ルキアのおかげで、弓月も気持ちがほぐれた気がする。
俺は弓月に向かって親指をぐっと立てると、
自分の着替えを持って帰り支度をするように言う。
後は展示品のドライヤーを元に戻して、
店の電気を切ればOKだ。



帰る準備はできたな。それじゃ鍵をかけて室外機の中へっと……。俺達は家までゆっくり歩いていくけど、ルキアはどうするんだ?





『僕は白猫ちゃんを、親のとこまで送り届けてから帰るにゃ』





分かった。それじゃ、またな


ルキアが去っていくのを弓月と一緒に見送ると、
少し遠回りで自宅の方へを歩いていった。
