迷宮に響き渡った音は、ハルの攻撃によるものだった。バイススカルソードは地面に転がり、額部分が木っ端微塵に砕かれている。



ハル…………





や……ゃりやがった。





おっしゃーーー!!
勝ったっすよぉ!


迷宮に響き渡った音は、ハルの攻撃によるものだった。バイススカルソードは地面に転がり、額部分が木っ端微塵に砕かれている。



ぎゃっはっは、
いいぞオニギリ坊主。
そーゆーのは
ヴァイオレンスで良い♪





まさか頭突きで勝って
しまうとは……。





でも、どこが弱点だらけ
だったんすか?
自分にはあの隙しか
見当たらなかったっすよ。





やれやれ気付いてないのか?





オイラもあの隙しか
見付けられなかったけど……





あんなもん、どこでも
ぶっ叩けばぶっ潰せるだろ。
全身弱点、それだけだ。





全然参考にならねぇ。





そんなことだろうと
思いました。
まぁ、その心意気は
見習うべきなのでしょうか。





全身弱点♪
弱すぎっす。





それよりダナンは
どうなの?
大丈夫?





大丈夫です。
ダナンさんも無事です。





アデルちゃん、
それに皆、すまねぇ。


ダナンの切られた箇所の止血が、見事に終わり応急処置されていた。ようやく上体を起こせるようになったダナンが、皆に謝った。
誰も責める事もなく、最悪の事態にならなかったのを喜びあった。



ハルさん…………
ありがとうございます。





…………





あっ!
後方から魔気の反応!





バルチャーフレイム!!





確か広範囲に
火炎ブレスを吐く魔物!?





くそっ!
遠い!!
まずいぞ!





っく。
今くらったら
マジでやばいぜ。





うおおおお!!


ハルが鬼義理を右手に握り間を詰める。傷付いた身体は満身創痍だが、全速力で間を詰める。
だが、バルチャーフレイムは首を左右に揺らし、火炎ブレスの予備動作に入った。
はっきり言って、もう、間に合わ、ない!



うぇっでぇっす!!


ハルの悲鳴がこだまする。
ただ毛躓いて(ケツマヅイテ)転んだだけだった。
それはさておき、バルチャーフレイムは跡形もなく消滅していた。不思議そうにユフィ達が目を丸くしている。が、すぐに状況を把握して振り向いた。



や、やった……


前方に手を奮ったロココだった。



ロココ……





おいおいカッコ良すぎるぞ。





あんなに早く……
信じられません……。





激強じゃねーか。
スゲーよ、ロココ。


事態を把握していないのはハルだけだった。そう……ロココが刻弾を使ったのだ。しかも、具現化の早さ、刻弾の速さはあっという間で、初めて実戦で使用したとは思えない程だった。
ユフィ達がロココに駆け寄り、褒めちぎり喜び合う。ロココは恥じらいながらも、しっかりとした口調で声を発した。



ハルさんが
勇気を示してくれたからです。
恐怖で縮こまっていた僕に
勇気をくれました。





あそこで一人で
づっこけてる奴か?





そうです。
づっこけてるハルさんです。





恐れた時こそ、
その人間の真価が問われる――。
私はしっかり見届けましたよ。


コフィンの言葉はロココの胸に届いた。それから疲労感と達成感、そして安堵感にまみれて、誰の目も気にすることなくロココは泣きじゃくった。
