


ああっ………!!





ふん、まだこのような山麓にいたとは。てっきり尾を撒いて逃げたと思っていたが





久道様、この鬼は女子であるうえに手負いです……この者を斬っても武士としての満足は得られないのでは?





愚かなことを申すな。先ほど女子供構わず妖怪を皆殺しにしろと言ったはず。それに、この鬼には聞きたいことがある





くあっ………!!





言え、人でなし。柳はどこにいる?





あああっ!!





久道様! いくらなんでもそのような――――





黙れ!! 私に口答えする暇があるなら、とっとと柳を探して来い!!





…………っ





くっ……ううっ…………!





さて、まだ死んでくれるなよ、鬼よ。貴様らには聞きたいことが山ほどあるのでな





…………っ!





私はずっと父上に認められたくて必死に剣を磨いてきた。秀政に鍛えられながらも父上に近づけるよう兵法も学んできた





だが、どれだけ己を磨いても、父上は私を見ることは無かった。素振りですら隣でさせてもらえなかった





うぅっ………!!





2年前、父上が山から鬼を連れて帰ってから父上は奴に夢中になった。隣で素振りも許してもらえなかった私を差し置いて、奴は父上から直に剣術を教わっていた。どんな形であろうと奴が私よりも父上に教えを受けていることが何よりも耐え難い屈辱だった。それを父上が死んだら敵討ちで兵を挙げるだと?





認められるはずがない! 許せるはずがないだろう!! 何故息子である私よりも、奴が……柳の方が父上に近いところにいるのだ!! 何故私よりも……!!





があああああああっっ……!!





分かるか妖怪? いや分からずともよい。貴様は黙って柳の居場所を吐けばよいのだ。そうすればあの世で再会できるよう便宜をはかってやる





…………っ





どうして………っ





どうして、奪われることしかできないのでしょう………っ





左手にもう感覚がない……何度も刺されたせいで何も感じれない





山ももう元には戻らない……この戦のせいで私達は何もかも失ってしまった





どうしてこんなことに………私達はそもそも何のために戦ってきたんだろう





だから、もうどこにも行かないで?





……もちろん





…………そうだ





なっ…………!?





…………っ!!





右手で、刀身を……!?





そうだよね………っ





うおっ……っ





そうだよね、柳……





明日を諦めるわけには、いかないよね…………!!





貴様ぁ…………!!


