公開実験がなかなか始まらないので、お客さんの中には家への帰途につく者が相次いだ。
公開実験がなかなか始まらないので、お客さんの中には家への帰途につく者が相次いだ。
そんな中、ボクはなんとか実験を中止させるため、不夜城助教授を説得する。



ふむ……。君のいうことはもっともだがそれでも僕はこの実験を止めるわけにはいかないんだ。





え、どうしてですか?





それは、この実験自体が僕の夢だからだ成功しても、失敗したとしても、そこから学ぶことは多いから。次のステップに進むために、避けられない試練なんだ。





そうですか……。





ゆーま……はなぜ不夜城さんの
実験が失敗すると思ったんだ?





えっと、それは……。


レンセンパイに言われ、ボクは言葉に詰まる。
物質転移装置について、十分な知識があるわけではない。むしろこちらは勉強し始めたばかりで、不夜城助教授の方が知識も経験もはるかに上だろう。
だが、なぜかわかるのだ。自分の手や足で歩いたり、口やのどを使って無意識に言葉を紡ぐのと一緒で、転移についてはやり方は詳しく説明はできないのだが感覚で分かる。
もし目の前で転びそうな人がいたら、黙って見ているよりはボクは転ばないように手を出したり、つまずきそうになる石について注意してあげるのが当たり前だと思っている。
それは、いけないことなのだろうか。



その子のいうことは、
おそらく本当ですわ。





真白……と、うわっどうした最強院!?





えぐえぐ……ナバちゃんがぁ、ゆーちゃんにぃ……蓮さんとぉ……ぐずぐず。





これはこれは、真白様。わざわざ御足労頂いていたとは。光栄に存じます。





……先生、ここではわたくしは一学生に過ぎません。敬語など無用に願います。





はっ、しかし……。





それより、わたくし先ほどとんでもないものを見てしまいましたの。個人のプライバシーもありますので説明できかねますが、実験が失敗するに十分な証拠足り得ると、わたくし確信いたしましたわ。





ゴリさん、それって……。





ゆーま、いえイナハ。あとでたっぷり お話聞かせていただきますわよ!?
おーっほほほ……。





それは……いかに真白様であろうとも、聞き捨てならない発言ですな。





あら、わたくしの言葉をお疑いに?





いえ、滅相もない。しかし……。





損得よりも、個人の尊厳の方を大事にしたい。不夜城さんはそうおっしゃりたいのでしょう、真白さん。ですよね助教授?





あなたは……。





くっ、貴様は……!!





こんばんは、みなさん。なにやら
楽しそうだったので、アタシもつい
この実験を覗いてしまいまして。





あっ、センセイ。





……はて、可愛らしいお嬢さん。アタシにはあなたのような弟子に見覚えはないのですが……。しかしセンセイと言う 人物となると……ふむ。これは興味深い





あっ……。





!!





やはり貴様の差し金だったか。しかも、こんな弟子持ちやがって……こんな……可愛いなチクショウ! うらやましいぜ!!





ま、多椙君のいうことも一理ありますね僕は学長に許可を取りこの実験に臨んでいます。どうか続きをさせて頂きたい。





……実験のためなら命をもかける。
それが殿方の矜持というわけですか?
この大学内をあなたの血に染めても?





左様です。(キリッ





……わかりました。ならばわたくしは 女の寛容でそれに応えましょう。





では多椙センセイ、
あとお願いしますわね♪





お任せを、稲葉君のお友達のお嬢さん。





では不夜城さん。あなたと真白お嬢様の顔を立てるために、ひとつアタシと簡単な勝負をしませんか? アタシとあなた、お互いのプライドをかけて。





なに、勝負だと!?





ええ。もっとも、あなたが亡くなっては勝負にならないので、実験体を無作為に選んだ生物とします。……そうですね、
あの黒猫などいかがでしょうか?





……えっ!?





おや、チビクロじゃないか。
こっちに来てたのか。





センパイ、あの子知ってるんですか?





ああ。今日から見かけた野良なんだが、他のボス猫が怖がって近づかないんだ。人をよけて通るし、なかなかのイケメン猫だな。雌猫にも大人気だぞ。





へえ、てっきり怖い猫かと思いました。よいしょっと。あ、男の子なんですね。





いやん、はずかしい。





斎藤氏のお墨付きか。どうやら
八百長じゃなさそうだな。





で、どうしたら勝ちに
なるんだ? ああん?





簡単です。この黒猫を転移できたら
あなたの勝ちです。勝てばアタシは
あなたのいうこと何でも聞きましょう アタシが勝ったら……、





……そうですね、この黒猫の死体を頂き
ましょうか。貴重なデータの塊としてね





えっ、それは可哀そう……。





多椙教授。自分の情報量は人間とは比較になりませんよ。八百長じゃないですか?





いいんですよ、これで。目的はあくまで彼の命を救うことですし。それにこれは真剣勝負なんですから。あなたを転移できたら、彼の装置はアタシ以上だと証明できます。……シャドウ君。あなたのバックアップは取ってありますよね?





まあ、一応。オートセーブですからね。あと自分は今任務中なんですが……。





パープル君にはアタシから報告しておきます。どうぞ安心して逝ってください。





いいだろう、その勝負受けて立つ。
――もし俺が勝ったら、貴様に
俺様のケツの穴を、たっぷりと
舐め取って貰うぜえぇ!?





いいでしょう。では始めてください





チクショー!!





ああ……チビクロ。可哀そうに……


