ネオシティから数キロほどの廃墟と化したサッカースタジアム。客席には武装した二万人の群衆。そのいずれもが競技場のバラックの前に立っている男を凝視していた。
ネオシティから数キロほどの廃墟と化したサッカースタジアム。客席には武装した二万人の群衆。そのいずれもが競技場のバラックの前に立っている男を凝視していた。



やってやるぜ。畜生。あの忌々しい壁をぶっ壊してやる。





おい!お前ら良く聞け!


トコナミは崩壊したスタジアムに集まった群衆に向かって話し始めた。
静まり返る群衆。



な、なんだよ。トコナミさん。何にも言うことないって、言ったくせに・・・。





この間違いだらけの世界を正すために、俺たちは、あのネオシティの壁を破壊する。しかし、お前らの協力は一切求めねえ。俺たちだけでやってやる。でもなあ、あの壁がぶっ飛んだ時はお前らも一緒に行かねえか?壁の中でいい暮らししてきた野郎達に思い知らせてやりたくねえか!


トコナミは一気に叫ぶと群衆を睨みつけるように静かに見渡した。
それまで固唾を呑むように静まりかえっていた群衆がざわめき始めた。
そして客席のフェンスを乗り越えて一人の男がトコナミに近づいてくる。



おい、ごみ拾い





誰がごみ拾いだ!?てめえ何もんだ、ふざけやがって。なんだ、やるのか?いいぜ、やりてえなら相手になってやる。かかってこい!!





まて、興奮するな。





う、うるせえ興奮なんかするか、馬鹿野郎!





ならいいが、少し話せるか?





おう、なんだ。聞いてやるよ。特別にな。だがあいにくこれから俺たち忙しいんでな、長話している暇はねえ、手っ取り早くすましてくれ。





わかった。オレの名前はチャドだ。あんたの名は?





俺はトコナミだ。で、一体何の用だ?





俺たちはあんたらが壁を壊そうとしてるという噂を聞いてここにやってきた。





どうせ高みの見物に来ただけだろう。興味本位の傍観者はいらん。帰ってくれ!





確かに俺たちはお前らのやることに手を貸すつもりはなかった……





やっぱりな。さあ、今すぐに全員引き連れて帰ってくれ。傍観者なんて糞くらえだ。





待て。話を最後まで聞くんだ。最初はと、言っただろう。気が変わった。壁を破壊して政府を倒す。俺たちの軍はお前らの行動に全面的に協力する。





俺たちの軍だって?





ああ、軍だ。厳しい軍事訓練も耐え抜いた二万の兵だ。武器弾薬も豊富にある。





そのお前らが俺たちの計画に参加するだって?





ああ、一緒にこの国を変えるんだ





……そんなに簡単に信じられるか。





お前は相当なひねくれ者だな。





うるせえ!そこまで言うなら勝手にしやがれ。ただ邪魔だけはするなよ。これは俺たちの聖戦だ!





ゴミ拾いの聖戦か。笑わせるな。





なんだと、やっぱり帰れ!超不愉快だ!


