走りながら適当な部屋に入り、
息を整える。



………


走りながら適当な部屋に入り、
息を整える。



ウラシマさん、何を考えているのですか?


亀が顔を真っ赤にして、
でも声を潜めながら怒っていた。



何も考えていない





何も考えていないって、オト姫さまは凄く怒っていましたよ





オト姫はどうして俺を連れて来たんだ?





オト姫様は人間の男のエキスが好物なのです。私たち亀が苛められるのはオト姫様の命令。私たちを助けた若い男をここに招くためのことだったのです。





そうして竜宮の城に招いた男からエキスを奪っていたのか





ごめんなさい





謝るなって。君を助けたいって思ったのは俺の勝手な気持ちだ。





私を助ける?





俺は昔から苛められている亀は放っておけない性分でな……オト姫の命令に嫌々従っている君を放ってはおけなかっただけだ





ウラシマさんは、バカですね。でも、嬉しいです


走って、走って、走りぬく。
城の中は入り組んでいて、
何処を走っているのかわからない。



妙だな





連中は追ってこないのか





ここは迷宮ですから。逃げ切れないと思っているのですよ





今までもわざと逃がして楽しんでいました。だからウラシマさんも気をつけ……





……っ





ウラシマさま


美女が現れる。
警戒もせずに、
殺意も見せずに
美女がゆっくりと近づいた。



何のようだ





お腹、空いてませんか?





そんなことは……


ぐぅぅっという音が鳴る。



……………


ずっと何も食べていない。
空腹は限界だった。
美女の手には料理の皿。
湯気と共に食欲をそそる香りが漂ってくる。



…………


ご
く
り
生唾を飲み込む。
だけど、
ここで何かを
口にしてはいけない。



ウラシマさん


心配そうに見上げる亀に
彼は微笑んで見せる。



これくらい、問題ない





そうですか、私たちが頂きましょう


美女は目の前で
美味しそうに料理を完食。
そして、姿を消した。



行こう





はい


