単身でブロンクスに相対したハルの一撃は、心臓の位置を捉えていた。ドロリと噴き出す灰色の液体。ジュピターに切られた傷もあり、人間ならとっくに死に至っている。
しかし、ブロンクスは更に大剣を振り回してきたのだ。



う、うぅ……
な、なんで……


単身でブロンクスに相対したハルの一撃は、心臓の位置を捉えていた。ドロリと噴き出す灰色の液体。ジュピターに切られた傷もあり、人間ならとっくに死に至っている。
しかし、ブロンクスは更に大剣を振り回してきたのだ。



あ、危なかったっす。
偶然避けれたっすよ。





野~郎~!
不死身かよ。
うおっ、ハンマーが
グシャグシャじゃねーか。





いちちち、
なんて打たれ強いんだ。


前衛三人がそれぞれの位置で、ブロンクスの打たれ強さに辟易としている。ダナンのハンマーはブロンクスの大剣を受けて、使い物にならなくなってしまったようだ。



ユ、ユフィさん!!
大変です!!
また来ます……
別の魔物が近付いてきています!





!!





ハル。
二人で一気に
コイツを攻撃するぞ!





わかったっす!
いくっすよー!





待って!


鞭を失ったユフィは、ダガーに手を掛けながらはっきりと伝える。



撤退します。





何言ってんだ!
あともうちょいだろ!





あなたも怪我をしてるし
ダナンの武器も
使い物にならないわ。





これくらい怪我のうちに
入らないだろ!
やれる!!





この敵も未知数だし
次の敵も勿論未知数。
一刻の遅れが
取返しのつかない
状況に繋がるわ。


ブロンクスの次の攻撃をバックステップでかわすジュピター。



ジュピター!
お願いっ!!
今は我慢してっ!





グッ、ゥゥゥ~





見えました!
二体います!





ジュピター!!





チッキショォ……


今迄で一番大きく振りかぶったブロンクスは、ジュピターに大剣をおもいきり振り降ろしてきた。



クッソォ~……





ジュピター……


ジュピターはブロンクスの攻撃を鮮やかに躱していた。そして反撃の剣をブロンクスの右足に放った。
明らかに移動を鈍らせたブロンクス。ジュピターは歯痒い思いを押し殺し、指示通りの撤退を選んだのだ。



やっぱり凄いっす。





即座に撤退!
入口の方に走って!


ガーディアンゲートから来た通路を走るハル達。通常、撤退には危険が付き纏うが、ジュピターが足を攻撃してくれたお陰で、逃げ切る事が出来た。



振り切ったみたいね。
もういいでしょう。


ユフィの言葉に反応し、全員走る足を緩め、息を整える。



はぁ、はぁ……





ふぅ……
ここは分かれ道の
少し手前ですね。





無茶苦茶打たれ強い
魔物だったっす。





それにパワーも
侮れんぜ。


肩で息をするロココの隣で、ダナンはひしゃげたハンマーに、もう一度目を落とした。



やれやれ、あんな小者に
ケツまくってんじゃないよ。





ッグ!





小者っすか?





いえいえ、良い判断でした。
自分達の戦力を
分析した上での判断です。
ですが……





?





撤退時には
危険がつきものです。





あ!





ロココ、どうしたの?





前方に魔物です!!





!!





よくあることです。





次は必ず倒す!





ジュピター単独で動かないで!





先頭の素早いリザードと
後方のアンデッドアクスは
なんとかなるでしょうが、
六本の腕を持つウェルキアは
まずいですね。
残念ながら…………





全力で先頭のリザードを
集中攻撃!
数を減らさないとまずい!
敵の攻撃は私がなるべく
引き付けるわ!
ダナンは
アデルとロココを守って!





いくっすよ!





ロココ。
魔気が溜まり次第、刻弾を。
温存したまま生き残れる
相手じゃなさそう。


