サバキ ラン
目星51-20→59失敗



笑が目を覚ますまで待って、お前達は速水千陽に真実をすべて語った。案の定、彼女はとてもショックを受けるな





………そん、な……





千陽さん…気を強く持ってください…!姿かたちは変わろうと、千陽さんは千陽さんです!





笑くんの言う通りですよ。俺達も見送りに行きます





……本当は、何となく、気づいてました…





え…?





姉が死んだのは、私のせいなんじゃないかって…怖くて…だから、知らないふりをしていました…





姉も、私と同じだったんです…私は、姉より変容が早かったから、姉妹でもこんなに見た目に差があったんですね…





私だけが劣っていたわけじゃなかった…私…馬鹿みたいですね…





馬鹿なんかじゃないです!僕だって…自分が劣っているって、ちょっとしたことで思っちゃうことありますし…





あなたたちだけじゃない…みんな、同じですよ





………ありがとうございます…





姉は、私よりも美に対して慎重だった…だから、耐えられなかったんです…





姉があの時伝えたかった事。『To be or not to be』真実を知って生きるべきか死ぬべきか。それが人として生きる、人生の最後の問題だと。





………皆さん、お願いがあります





どうか…どうか、私を殺してください…私を……人間として、死なせてください…!





…………





…………





…………





ひどいお願いだってことは、分かっています…でも…私も、姉と共に逝きたいんです…きっと、1人で寂しいだろうから…それに…





私、ちゃんと…千陽として、謝りたいんです…誤解していたって…私、子どもだったんだって…





千陽さん……





私は…あなた達に救われました…心を救ってもらえました…





でも…やっぱり、死ぬのは怖いです…もし、まだ甘えてもいいのなら…私を見送ってはくれませんか…?





気味の悪いお願いだとは分かっています…でも…





……俺は構わない。ね?笑くん、蘭





……はい…そう、ですね…





…………千陽





はい…





本当に、後悔しないね?





はい…





君は…それで、幸せ?





……はい。





幸せです。然木さん…私は、幸せです





…………………そう





千陽は、姉と同じように水中で花を抱いて死にたいと言うな。





その花…俺が用意してもいいかな?花言葉辞典も借りたい





異論無しです。蘭くんに任せます





俺も異論無し…頼んだぜ、蘭





わかった…何の花を用意したい?





……弔いの言葉は無粋だね…





リアルINT使いたい…いいかな





朝イチから動いていたからな…花言葉辞典をじっくり読んでもいいことにする。存分に発揮させてくれ





ありがとう…





花は二種類まで選ぶことが出来るぞ…さあ、何がいい?





俺が用意したい花は…ゲッカビジンとミヤコワスレだ





花屋で購入することになるぞ。





………そうだ





……目星-20で振ってくれ





-20!?


サバキ ラン
目星51-20→59失敗



うっ…





これは見つからないか…





……花は無事に見つかった。





え?





今の目星は…?





のちのち分かるさ





?





店を出ると、千陽が外で待っているな。彼女は、花言葉辞典を一度貸して欲しいと言ってくるぞ





もちろん…これはもとより彼女のものだ…今買った花束と一緒に、花言葉辞典を渡すよ





なら…千陽は少し泣きそうな顔をしてから、にっこり笑って、花言葉辞典と花束を大事そうに抱きしめるな





思い出深いものなんだな…花、好きだって言ってたし…





……他にやりたいことはあるか?





もうないよ…彼女が望む場所へ行く





わかった…





時刻は深夜…お前達は、花代の遺体発見現場にやってきた。





KP、千陽に睡眠薬を飲ませたい…多分、男が言っていたことは、そういうことだと思うんだ…





……わかった。千陽はお礼を言って睡眠薬を飲む…効果が現れるまで、少し時間があるな…





そのまま彼女は、水の中に横たわる…蘭が買った花を、その胸に抱えてーー





……然木さん…ごめんなさい、最後まで…私の手、握ってくれませんか…?水が、すごく冷たいんです…呼ばれているのに…なのに…とても冷たいんです…





………ああ。いいよ…俺でいいのなら、いくらでも…





手を握った蘭は分かるだろう…千陽の手に、薄い水かきが付いていて、少しだけ滑りがあること…変貌は、徐々に始まっているのだということが…





どうか、安らかに…





あっちでは、仲良くするんだぞ…姉さんと…





…………俺、死んだら真っ先に君を探すよ…だから、それまで…





またね。千陽ーー





蘭が握る手は、千陽は、徐々に冷たくなっていく…星に見守られ…眠るように水に沈んでいくだろう……それが、彼女が望んだことなのだから





胸に、白と青の花束を抱え…それに込められた思いに希望を見出しながら……速水千陽は、息を引き取った





エンディング『オフィーリアの水葬』…おめでとう。シナリオクリアだ





ここからはオリジナルエピローグだ。蛇足が嫌な人、オリジナル展開が嫌な人はここで閲覧をやめた方がいいだろう…





もしそれでもいいのなら、僕らは歓迎するよ。最後までゆっくりしていくといい





速水千陽の自殺から1週間後…警察の捜査で、彼女のの遺書が見つかった。遺書には、自殺に至った偽りの経緯と、自室の本棚にある『花言葉辞典』を、姉の先輩である然木蘭に届けてほしいという内容が記されていた。





花言葉辞典の1ページ目には、蘭宛の手紙が挟まっていた。そこには


あなたに会えてよかった
これは、私のあなたへの気持ち



とだけ書かれていた





……どういうことだろう…





意味がわからずページをパラパラ捲ってみると、本のページから何かが落ちる





これは……紫の花…?このページのものかな…





それは、薄い橙の台紙に紫の押し花が施された栞だった。栞が挟まれたページには、紫の花と同じ写真の花が載っており、その花言葉が記されている


紫蘭(シラン)
花言葉…あなたを忘れない、変わらぬ愛



………千陽……ダメだよ…こんな、俺なんかに……





その日は、巷で有名な怪盗が予告状を出していた日だったが、未遂で終わったそうだ。その理由は…なんの気まぐれか、その日の夜海へ赴いた怪盗本人にしか、分からないーー





また逢う日まで…君の、その儚い美しさを…私は決して忘れないよ


