美咲は自宅に一人でいると、
進入してきた謎の存在と遭遇し、
リビングで襲われていた。
美咲は自宅に一人でいると、
進入してきた謎の存在と遭遇し、
リビングで襲われていた。



コレデマタニンゲンニモドレル。





ダメ、殺される。


謎の存在の両手が美咲に触れそうになる。



ただいまー。





ただいまー。





お父さんとお母さん!!


玄関の方向から両親が帰宅した声が聞こえた。
電気を点けたのか、
廊下の明かりが扉の隙間からこちらへ漏れている。



ニンゲンダナ。


美咲へ向けた両手を引っ込めると、
リビングの扉を見た。



あら?美咲の靴。





なんで廊下に転がってるんだ?


母が廊下に転がる美咲の靴を拾い上げようとした時。



来ちゃダメー!!





美咲!?


リビングから美咲の叫び声が聞こえた。
異変を感じた母は、
廊下を駆けてリビングの扉を開ける。



美咲!!





お母さん……。


リビングへ飛び込むと、
娘を襲う得体の知れない存在を目の当たりにした。
実際の距離は近いのだが、
とても遠く感じる。



ニンゲンガフエタ。
コレデドウカノパワーモマス。





逃げなさい!!





体が動かない……。


母から逃げるように言われるのだが、
恐怖から腰が抜けてしまい、
全く立ち上がることができない。



美咲!!


少し遅れて入ってきた父は、
同じく謎の存在に驚くのだが、
娘を救うためにその存在に駆け寄った。



娘を放せ!!





オロカナ。





この気配は……。





ふっ!!





ジャマダ。





が、あ…………。





あなたー!!





…………。


父は大量の血を吐き出すと床に倒れた。
床には流れ出た血が溢れる。



お、お父さん…………。





サカラワナケレバドウカシテヤッタモノヲ。


父が無残に殺され、
美咲も母も動けない。



マズハムスメ。
ソノアトハオマエダ。


謎の存在は立ち尽くす母を指差すと、
再び美咲に触れようとした。



ヨウヤクニンゲンニモドレル。





いや…………。





ナンダト?





え?





大丈夫?
美咲。


謎の存在が美咲に覆いかぶさる瞬間、
母はすかさず間に入って美咲を庇い抱きしめた。



ジャマガハイッタカ。
ナラオマエカラダ。





あ…………。





ジカンヲカケテユックリナジマセナケレバ。


母の体は、
その存在の体に少しずつ取り込まれていき、
影のように薄くなっていく。



お母さん。





大丈夫よ。
恐らく、お母さんがこうなってる間は襲われることはないわ。
今の内に逃げなさい。





できないよ、そんなこと。





なら助けを呼んできて。
ね?





そんな、私……。


体の震えは止まらず、
全く動ける気はしない。



安心しなさい。
あなたならできるわ。





お母さん。


母に強く抱きしめられ、
涙が溢れてくる。
その感触はとても温かく、
優しい母の香りがした。



…………。





…………。


母が優しく美咲の体を放すと、
美咲はゆっくりと立ち上がり、
扉の方へと駆けていった。
助けを呼ぶために、
いったん自宅の外へと飛び出たのだが、
誰に助けを求めればいいのか分からない。



誰か、誰か呼ばないと。


自宅の前で右往左往しながら、
キョロキョロと辺りを見回していると。
道の向こうから誰かが駆けて来た。



君はこの家の人かい?





はい。
あの、お父さんとお母さんが。


見知らぬ人物ではあるが、
震えた声で答えた。



やはり異変はこの家か。





中に入るよ。


その人物は美咲の横を駆け抜けると、
美咲の家の中へと入って行った。
