…………これからもオレはお前の兄貴だから。オレさ、お前の兄貴じゃないと……この先、生きられなくなったみたいでさ……

爺さんに誓ったからかもしれない。オレの命はお前のもの……お前の存在がオレの生きる理由なんだよ。爺さんから名前を貰った時から、そうだった

……………そんなの、重すぎるよ

ああ、わざと重くしている

出来れば、あの時……本の世界に留まっていて欲しかった。
物語を完結させないで欲しかった

それは無理な話。
本の世界から図書棺に戻るには物語を完結しなければならないから。

あの世界だろうと、ここだろうと、お前の望みは本を読んで過ごすことだろ？

そうだね、本音を言えばね。たくさんの本があるのなら、何処でも良かった

お前はたった一人で引き篭もって読書していたいのだろうが、一人ではいずれ寂しくなる。そんな思いはさせたくない

本があれば寂しくなんかないよ

どうだか……

………

嫌なことを忘れた状態で本の中に残れば良かった。
オレも本の世界に残れば一人ではない。寂しいことは何もない

私は、それが嫌なの。私の我儘の所為で、兄さんに迷惑をかけたくなかった

迷惑って何だよ？　お前がいなくなる方が大迷惑だよ。お前はオレを狂わせるつもりか？

！

私、思ったの。この偽りの兄妹関係がいつかは終わるだろうって

そんなことは……

違う。
いつかは終わらせないといけないの。お爺様もそう思っていたから、私に貴方の過去を教えてくれたんだよ

………っ

貴方にも恋人が出来るかもしれないでしょ

はぁ？

まぁ……人間としての幸せを手に入れて欲しいって話……もし、その時が来たら私は兄離れをしなければいけないって

人間としての幸せって……

私と貴方の間には血のつながりはない。だから、もしも貴方が自由を望めば。その時は、引き止めてはいけないって。

そうだったのか。余計なお世話だな………

貴方は私を護る為に用意された兄、だけど。私は、貴方の足枷ではない。

足枷だなんて思ったことはないさ。お前はオレにとって、何よりも大事なモノだ

………

言っておくが、お前を嫁に出すまでは、恋愛なんてしないよ

兄さんの愛情は、やっぱり重いね

その重すぎる愛情は受け取っておくよ

嫌と言っても押し付ける

わかったから。兄さんは帰って

それじゃ、ダメなんだよ。オレは、お前をここから連れ出さなければならない……

それは、私の望みではない

本さえ読めれば何処でも良いのなら、現実世界でも問題ないだろ？

………そう、だけど。別に死を選んだわけじゃないんだよ。私は生きている。今まで通りに兄さんが好きなようにすればいい

ずっと目覚めないのは、死んだようなものだろ

…………

…………

オレはこれまでお前が嫌がることはやらなかった

うん

オレは今からお前が嫌がることをする

え？

お前が現実に戻りたくない理由は分かっているよ

………

そいつは………オレやソルには、どうすることも出来ない理由だ

………だったら、放っておいて……それは私たちの問題だよ

放ってはおけない。【私たち】というのなら、その片割れのことはどうするつもりだ？

………そんなの、貴方には関係ないよ

オレはこれから、お前の為に、お前を傷つける

これが、オレとお前の結末になる。
お前がオレに望んでいた、「放っておいて欲しい」という望みを……オレは叶えない。