【第十三幕】
『天地創造ノ神、四人の使者を従えて竜を殲滅す』
【第十三幕】
『天地創造ノ神、四人の使者を従えて竜を殲滅す』
当時、まだ幼い私には目に広がる光景をすぐに受け入れることが出来ませんでした。
焼け崩れた家々、一瞬にして消滅した両親、村人達の記憶。
この残酷な現状から目を背けたくて……、現実を理解したくなくて……。
だからこそここから出て行くという選択肢を捨て、村に残って生活を続けました。
食料は近くの山から山菜や川魚を採取し、自身の火を操る能力を使って食材に火を通して食べました。
能力のおかげで生きていくことに関しては全く問題はありません。
そんな生活が続いたある日です。
この私以外何もない村に、珍しく二人の来客が訪れました。



あらら! さっぱり消え去っちゃったのね!





神よ、この焼け方は完全に『竜』の仕業かと思われます





何を言っているのヴォクシック、これを人間がやったのだとしたら『左腕』である貴方のポジションも危ういわね





ぬぬぬ! 私を外すのでしたら『右腕』の方が……





ノアは駄目よ、何だかんだで使えるもの! 虚無の力も持ってるしね





ぬぅ……





ん?





どうされましたか?





……ヴォクシック





はっ!





もう帰っていいわよ?





え、ええっ!? 何ですか突然!!!





あなた今『新薬』の実験で忙しいんでしょう?
こんなところで時間を持て余してていいの?





あ、あんたが一緒に来いって……





分かりました、では私はここで失礼します……





付いてきてくれてありがとね!


神様と呼ばれていたその少女は付き人を強引に帰宅させ、完全に姿が見えなくなるのを確認し終えた後、私が隠れている方向へ歩いて来ました。



こんにちわ!


「こ、こんにちは……」



えーっと、ここで何をしているの?


「ここで暮らしています」



ここで!?


「は、はい……」



もしかして、これ……貴方がやった?


(あ、この人もか……)と私は心の中で呟きました。
あの惨劇が起きた後、この村を訪れた人たちは皆揃って私を疑ったからです。
この少女が本当に『神様』と呼ばれる存在として、でも私にとっては他の方々と大して変わりまん。



な、わけがないか!ハハハ!


「……は?」



でも貴方から感じるこの力は……


「え、なんの話ですか?」



ねえ貴方、名前は?


「ベ、ベルです……」



じゃあベルちゃん! 行くところがなければ私と一緒に来ない?
両親の敵討ちに協力できると思うんだけど!


「あ、あの竜達のことを知ってるんですか!?」



ええ!
ちょっと話でも聞いてみない?


これが私と神様の出会いであり、復讐の物語が始まった瞬間でした。
彼女は突如この世界に出現した竜を殲滅するために、より優秀な部下をスカウトして回っていると言います。
ここに来たのも強い力を感じたのだとか……。
私は『火の賢者・ベル』の称号を与えられ、他にも三人いる賢者達と共に、竜との戦いに没頭していきました。
神様の的確な戦略と私達『部下』の活躍で、見事に全ての竜は倒されました。
私は敵討ちを実現させ、本当に感謝しました。
でも、復讐は……。
神様が竜を生み出した張本人だと知ったとき、私の中で何かが、全て壊れて。
復讐が……。
急激に…………。
復讐………………が。
加速していく。
そしてあの日、神の神殿にて。
第十三幕 終
