第2幕
謎の視線



はあぁぁ…今日もスクープなしかぁ…





怪盗キャラメリゼの犯行も見逃しちゃうし…ホントに運がないなぁ…これじゃ凄腕ジャーナリストなんて、夢のまた夢だよ…





あーあー…今目の前に怪盗キャラメリゼが現れて、カメラに収まってくれたりしないかなぁ…





きゃっ!?





わっ!?…ああ…人がいたんだ…





ごめんね、レディ。怪我はないかい?





は…はい…どうも…





そっか…なら良かった。それじゃ、私はこれで





………か、かっこよかった…今の人……ん?





あーっ!!か、カメラが!!





………ほ…良かった、壊れてはないみたい…





あれ…?こんな写真、撮ったっけ……さっき落とした時に撮っちゃったのかな……消しとかな……きゃ…?





これって…!!


第2幕
謎の視線



むー……





んぅー……





…何やってるんですか





んー…今朝から何かにつけられてる気がするんだよね…ちょっと気持ち悪くて





あなたでもそう思うことがあるのですね





それどういう意味?





言葉のままの意味ですが





ちょっとわかんないなー


学校からの帰り道。朝から感じている視線を何とか出来ないものかと、俺は思考を巡らせていた。このままじゃベルリーナを家に送り届けることも儘ならないや…



ブリュレさん、今日はここで





え!?





朝からということは、その視線はあなたを追っているのでしょう?巻き込まれてはひとたまりもありませんから





ま、まあその可能性は無きにしもあらずだけど…





道中、背中には気をつけてくださいね。では





待って待って!!待つんだベルリーー





サヴァランさん!!





っ……り、リーナ…


あ、危ない…思わずベルリーナの本名を叫ぶ所だった…ちょっと落ち着かなきゃ…!



確かに、この視線は俺を付けているものだ…でも、その間君はほとんど俺と一緒にいた…もし相手に悪意があったら、ここで君が一人になるのは危険だ





…………それもそうですね…





そう。だから…





きゃっ!?


俺はベルリーナをふわりと抱き抱えーー所謂お姫様抱っこという形でーー視線から逃げるように走り出した。



!!


視線の主も俺の考えに気づいたのか、慌てて走り出す気配がした。



ブリュレさん!!何するんですか、降ろしなさい!!!





このあたりの抜け道ならいくらでも知ってる!ただ、レディの君に歩かせるのはちょっと危険だからね…我慢して!!





っ…!!


細い路地裏やトタン屋根の上などを経由し、10分ほどで、俺たちは何とか視線の主を振り切った。
完全に気配が消えたところで、俺はスノーボール邸に進路を変え、無事にベルリーナを家に送り届けることに成功した……が



いっ…!?





最低です!!


何故か激怒されてしまい、ベルリーナは顔を真っ赤にして邸宅へ入っていった。



………





……スリルが強すぎたかなぁ…


熱が残る頬に軽く手を当て、俺は念のため抜け道を経由して自宅へと戻った……



今日は疲れたなぁ…ただいーー





サヴァラン!!あなた何したの!?





へ…?


思わず間の抜けた声で返し、疲れで伏し目がちだった目線をあげる…と



君が、サヴァラン=ブリュレ君だな。俺は刑事のブレッド=シュトーレンという者だ





へ…え…?けい、じ…え…?





実は君にある容疑がかかっていてな…話を聞かせてほしいのだが、いいか?


うそ…だろ…?
