洞窟の主 その1



しゃああ~完・全・回・復!





朝のスパーリングをするぜ! シュシュシュ!





いつもながら驚異的な回復力ですね。





あこがれるだろ? シャッシャッシャッ ハーッ!





それはどうでもいいんですが、新しい依頼が来ていますよ。手伝ってもらえますか?





なんだと! それを先に言えよぅ! 先に――





――行ってるぜ!







どこに行けばいいんだぜ?





うふふ、話を聞かずに飛び出しちゃうなんて可愛ですね。こちらですよ。


―☆―☆―☆―



それで村長、お困りごとと言うのは?





度重なるモンスターの襲来に困っておりまして……





そう言ってる間にやつらが!


村の柵を超えてモンスターどもが躍り出る!






行くぜ!


ひゅひゅひゅ! 数の差をものともしない。目を斬りつけ、腕を斬りつけ、ひるませ、スキをつくる。中には腕も目もない敵も混ざっていたが、とにかくなんか斬りつける。



ぐわあーー!


反応の遅れた相手が攻撃に移る頃には、すでにスネイクは別の場所。



てめえら全員おせえんだよ! 俺を止めてみせやがれ!


とは言え単騎対多数。徐々に包囲を狭まれ、ジリ貧である……! そのとき。



詠唱完了。スネイク、避けて!





うぎゃあああーーー!





ドロドロドロ……


大規模魔術。魔術師アルマドの本領発揮である!



おおお、おおおおなんと頼もしい……飛びかかってきたものどもがチリに……





しかし、これで終わりではありません! モンスターはあの洞窟から現れるのです。どうか、退治をお願いできませんか。





任せろぅ!





あ、ちょっと、そういうときは追加料金……





おい! この洞窟真っ暗だぜ! 怖いなー!





ゆっくり行かないと危険ですよ――





いてー、狭えなここ。行くぜ!





ほらー……言いましたのに。





って、立ち止まってくださいよ! また怪我しますよ!





風の化身である俺様を止めるのは何ぴとたりとも無理だー!





オーウ!


地面にゴロゴロと転がるスネイク。



あらあら……悪い頭が更に悪くなったら大変。仕方ありませんね――ラオ・レン!


ボッ!
炎系魔術のほのかな灯りが洞窟を照らす。



てめええ何でそれ、最初から使わなかったあ~~?





魔術はね、発動するまでに時間がかかるんですよ。





な、なんだと……そんな照明使えねえじゃんか……





いや、別に照明係として身につけた力ではありませんが。


お気楽な無駄話をしていたその時!
グルグルグル……!
灯りの届かぬ奥の方から、唸り声。そして光る2つの目!



! おいでなすったな!





行くぜアルマド! てめーはその時間のかかる魔術で、せいぜいサポートしな!





なんという暴言でしょう。





ま、いいですとも。自分の役目は心得ていますよ。


続く
