この話は、私が就職したての頃の事だ。
職場のメンバー5、6人で旅行に行った時の思い出話。海が近く料金の割りには豪勢な料理が出る旅館だった。
この話は、私が就職したての頃の事だ。
職場のメンバー5、6人で旅行に行った時の思い出話。海が近く料金の割りには豪勢な料理が出る旅館だった。



プッハー。
食った食った。





いやぁ~うまかった。
わては満足でしゅ。





な、うまかったろ。
俺の選ぶ旅館に
間違いはねぇ。





流石先輩。
勉強になりましゅ。


噂に違わぬ豪華な料理に、舌鼓を打った一同。そして客室に帰ろうとした時、ロビーにあるビデオゲームが視界に入る。
ストリー○ファイターゼロ2というその当時ですら古い対戦ゲーム。そして、酷いドット絵の競馬ゲーム。いっちょ前にデモ画面があるが、カクカクの動きに辟易とする。クオリティ低さはやらずとも言い切れる。そんなゲームがあった。しかも二台……。



こんなの誰もやらないでしょ。





まったくでしゅ。





よっし。
それならこれで対戦しよう。





ふ。待っていたでしゅ。
その言葉を。


私達は、対戦ゲームに盛り上がった。古いと言えど、往年の名作ゲーム。バランスも良く、対戦は白熱した。
そこに暇を持て余した先輩がやって来て、私達の対戦を煙草を吸いながら眺めていた。



何でこんなゲーム
あんだろうな?
去年もあったけど。
電気台もあるし
採算とれないだろ。


競馬ゲームを視界に収め、ごもっともな意見を呟く先輩は、煙草の火を灰皿に押し付けた。



おらぁ、
死○ぇ!
このメス豚がっ!!
昇○レッパァーーー!!!





ぐほぁ!!
なんですとぉーー!!


調度、対戦が終わったところだった。我々の後ろからコインの音がした。なんと先輩が例の競馬ゲームに100円玉を投入したのだ。



ふーーー


何食わぬ顔をして煙草の煙を吐いている先輩だが、このタイミングで始めたという事は、私達にその顛末を見届けてもらいたいのだろうか。



ドブに金を捨てる
ようなもんでしゅ。





いや、マジで俺も思うよ。
でもなんかやってみたく
なったんだよ。


どうやら着順を当てるゲームらしい。オーソドックス。実にオーソドックス。
レースは始まった。やはりクオリティはデモ画面通りカクカクで酷い。目に毒。世のお母さんが、「ゲームのしすぎは目に良くない」と言うのを、実感したのは初めてだった。
着順予想ははずれた。
そしてふと我々は思った。



これ予想が当たったら……





どうなるんでしゅか?


先輩は止まらなかった。
そして次の100円も虚しく機械に飲み込まれ、その次の100円も何事もなく100円としての仕事を終えていった。



なんだこれ?
なめてんのか?


先輩の機嫌が悪くなる中、我々は見守るしかなかった。先輩はもう700円も入れている。少し弛緩した空気が流れ始めた頃、遂にその時は来た。



当たったーーー!
ざまぁ見ろぉ!


何にざまぁを見てもらいたいのか知らないが、兎に角当たった。



で?


そう思った瞬間!



え!





え!





ええぇぇ!!


ゲーム台のどこからか100円玉が5枚出てきたのだ。先輩の予想したお馬さんは5倍の配当だった。



なんか出た。





嘘でしょ?





素晴らしい!


そうリアルマネー。日本ならきっとどこでも使えるお金。キャッシュ、現生、悪徳政治家に言わせたら実弾。
それから我々は寝ずに、その競馬ゲームをプレイした。中には250倍という大穴配当があり、絶対当たらねぇと言っていましたが、見事最初の勇者が現れたのです。



す、すげーーーーっす!!





せせせせせせ先輩っ!!
うおぉぉぉぉ!!





キターーーー!!


以後、このイラストを25回繰り返し。
どこにそんなに入っていたのか? 100円玉を吐き出し続けるゲーム台。鳴りやまぬ金属音! ちなみにこの時、夜0時頃。他の客への騒音なぞ一顧だにせず100円玉は溢れ出て来た。
我々は楽しかった。
結果、最初に手を付けた勇者(先輩)が、250倍を5度も的中させるまで狂乱の宴は続いた。



いやぁ、少し負けたな。
でも楽しかったぁ。





わては二万も勝ったでしゅ♪


そして250倍を5度当ててみせた先輩は……、
トータル5万円負けた挙句に、唸るほどの100円玉をスーパーのレジ袋に入れて持ち帰った。

コメントメルシー、ピッツァさん。
もう10年以上も前の事なんで流石に撤去されてるかもしれません。
それがなくても良い旅館には違いないので、機会があれば確認してきますw