敬介の右足によって放たれた渾身の腱撃は、
幻重の身を守っていた点岩礁を打ち砕き、
さらには、
その奥の幻重の大きく突き出た腹をも捉えた。
幻重は油断から攻撃を避けることができずに、
両膝を着いて腹を抱えた。
点乱雨は止み、
日も落ちてきて、
ただの雨だけが降っている。



腱撃!!





ぐぅぉっ…………。





決まった!!





ふっ。


敬介の右足によって放たれた渾身の腱撃は、
幻重の身を守っていた点岩礁を打ち砕き、
さらには、
その奥の幻重の大きく突き出た腹をも捉えた。
幻重は油断から攻撃を避けることができずに、
両膝を着いて腹を抱えた。
点乱雨は止み、
日も落ちてきて、
ただの雨だけが降っている。



くそっ!!
どういうことだ!?
今まで点乱雨の防御に力を使っていて、
全く攻撃力がなかったのに。





へっ。
自分が強いって余裕こいてるからだよ。





お前も終わりだな。





くそっ。
なんでかわからないけど。
ヤバイな。
まともに攻撃を受けちゃったよ。


二人は秋野実神社での矢島のヒントを元に、
一人が味方の防御、
一人が攻撃という役割分担で作戦を立てていた。
そのため、
敬介は腱撃の威力を上げることに集中する。
大宮は自らの防御を最小限に、
幻重を作戦のカモフラージュで攻撃しながら、
敬介の頭上に降り注ぐ点乱雨を攻撃していた。



さぁ、お前の負けだ。
目的を話せ。





僕の負けだって?
そんなわけないだろ。





強がり言っても無駄だぜ。





それはどうかな。


幻重がほくそ笑むと同時に、
大きな閃光が辺りを瞬時に照らし、
パラパラと降っていた雨は本降りになった。



雷か!!





ふっふっふっ。





何がおかしい?





う・し・ろ。


敬介と大宮が後ろを振り返ると、
戦いの最中に幻重が投げた点杭の三点の中心部分に、
黒いモヤが集まり出した。
黒いモヤはやがて2つの塊になり、
人の姿へと変貌した。



…………。





くっくっく。
お前もやられてんじゃねぇかよ。





うるさい、幻流!!


目の前に現れたのは、
ローブを着ている男と幻流。
幻流は驚く敬介と大宮の間を歩いて通り過ぎ、
幻重を笑ってバカにした。



お前はあの時の!!


纏っている影力から悟り、
敬介はローブを着ている男を指差し叫ぶ。



まさか、
お前らがここまでやるとはな。


男は大きくジャンプし、
敬介たちを飛び越えて幻重の傍に着地した。
そして、
背を向けている男は敬介たちの方に向き直る。



形山君、大宮君!!





無事だったかい?


戦いの前に連絡していた美咲と矢島が、
敬介らの元に現れた。



天野さん、矢島さん。
来てくれたんですね。





ああ。





ちょうどいい。
お前ら光術士に見せてやろう。
我ら三幻僧の目的成就の瞬間を。


そう言って、
着ていたローブを脱ぎ捨てた。



…………。





俺は“面”を統べる者、
幻角(げんかく)。





ちっ。





ふっふっふっ。





三幻僧が揃った……。





くっくっく……。





あなたが私を……。


敬介、大宮、矢島、美咲の四人と、
三幻僧の幻角、幻重、幻流の三人は睨み合っている。
