チーム・ブラックガード その1



はあ……はあ……まずった!


薄暗い裏路地。駆け込む女性あり。



ようよう姉ちゃん、こんな裏路地にいらっしゃってどうしたの。それより僕と遊ばな~い?





やかましいわ このチンピラ!


絵に写したくなるような美しいケリ。顔面につま先がめり込み、胡乱な男は退場する。むごい。



まったく、チンピラに関わってる暇はないのよ。早く、ここから逃げなきゃ……





いたぞ! あの女だ!





ヤバい!


迫りくる者あり。襲いかかる男は完全武装した戦士の様相。それに対して、丸腰の女性。
一巻の終わりである!
そのとき――!



――――


上から振り下ろされたのは激しい剣戟。屋根の上から舞い降りた人の手によるもの。
鎧の男の頭頂に直撃し、声もなく崩れ落ちる。
飛び降りてきた男は剣を一振り。そしてこちらを向く。



大丈夫か。





ああ、ああああ
リチャードかぁ~ た、助かったあ~





まったく、こんなの聞いてないわよ。簡単そうな依頼だと思ってたのにさあ~!





にゃーん


物陰より現れる猫。



あ! いた! あんたのためにどんだけ苦しめられたと思ってんの。今度こそ、捕まえてスマキにしてやる!





ふ、ふぎゃー!





ほどほどにしてやれよ。


~~6時間前~~



猫を、探してほしいの。





お嬢ちゃん、ここは猫探偵事務所じゃないのよ。





いいじゃねえかククリ。どうせ暇だろ。なんでもいいから依頼を引き受けようぜ!





暇なんだよ俺は。血が騒ぐんだよ!





あんたいつもそれじゃない……





ま、いいわ。





リチャードも外出中だし、どうせ大きな仕事は受けられないもんね。わかったわ、ネコ探し引き受けてあげる。


彼らは依頼請負人。
リーグレンの都民より持ち込まれる依頼を解決することをなりわいとした武装集団。用心棒から怪しい運び屋、決闘の代理など何でもござれ。



なのに、入ってくる依頼ときたら、こんな可愛らしいものばかりなんだから。腕がなまっちゃう。





う……ごめんなさい……





お、お嬢ちゃんは何も心配する必要ないんだよ! 俺らに任せとけって、ほら、ほら、にゃーーーん!





この暑苦しい男は放っといていいから。





……てなわけで、迷子の猫ちゃんを探してたんだけどさ。





見つけた! と思ったら逃げ出して、よくわかんない会議の席に迷い込んじゃって。





聞かれちゃいけないやつだったみたいで、追われて……散々だったわ。





それはそれは。俺が留守の間、随分充実していたみたいだな。……くっくっく……





はっ倒すわよ! 笑いごとじゃなかったんだから。





くく、すまんすまん。ところで、スネイクは? 姿が見えないけど?





あっちのドブ川で寝てる。





おい、どうしてそうなった!?


依頼を引き受ければ、毎日がドタバタ。これが、依頼請負人集団、ブラックガードの面々である!



川をあされ!





ふがふが。リチャード、俺はもうだめだ。先に行ってくれ……最後に、猫を、助けられてよかったぜ……





しっかりしろー! 傷は浅いぞー!





あ……ごめんそうでもない。めっちゃ深い。重症。





ごぼごぼごぼ……


続く
