薄れゆく意識の中で碧の顔が見えた。
窓から顔を真っ青にして下をのぞき込んでる。
いい顔。
悠美のことしか考えてない顔に、笑顔がこぼれた。
薄れゆく意識の中で碧の顔が見えた。
窓から顔を真っ青にして下をのぞき込んでる。
いい顔。
悠美のことしか考えてない顔に、笑顔がこぼれた。
碧が学校に来なくなったあの日、あたしは生まれて初めて憎いと思った。
毎日碧の家に通った。
碧はありがとうというだけで学校には決して来なかった。
序列があたしより上の人間が下した決断は、あたしの評価も下げた。
碧の友達の評価も下げた。
許せなかった。
自分勝手だと思った。
でも、その時あたしには何の力もなくて、公園のブランコで途方にくれていた。



何やってんだ?





見てわからない?





ずっとひとりじゃん





……





友達は?





ほっといてよ





泣きそうな女の子はほっとくなって、友達に言われてるんだ





じゃあ、その友達がまちがってる





女の子はね、ほっといてほしいときもあるの





……そうか





すなおね


突然現れた男の子は、この辺の学校の子じゃなかった。



おれ、この辺まで探検しに来たんだ





学区違って遊ぶと先生に怒られるよ?





いいんだよ!
俺、序列1位だぜ?





だから何よ、序列がなんだって言うのよ





上の人間なんて馬鹿ばっかじゃない





?





なによ





お前が上になればいいだけの話じゃん





女の子よ?
なれるわけないじゃん





俺の学校序列2位は女子だぞ?





はぁ?!





頑張ればなれるって


男の子は、隣の学校の人だった。
名札に書いてあった。



やすあきくん?





ん?ああ、名札





やすあきくんのとこの2位って女の子?





うん





……あたしも頑張ればよかった





なんかあったのか?


トーンが落ちた声にやすあきくんはゆっくりと声を出す。



お友達……、大切なお友達が、いじめられて、でも、あたし、助けられなくて





うん





序列が、その子の方が高いの





1位は止めないのか?





止めないの。
うちの学校、そういう学校なの





自分の身は自分で守らなきゃいけないの





ふーん





だから、碧が、いじめられても、あたし、なにもできなくて





……本当に大切なら何を捨ててでも守れ





?





俺のとこの2位の言葉





いい言葉だろ?





あいつはそうやって、大切なもの全部守ってる





お前も、女子だろ





あいつとおんなじ女の子ならできるって





う、うん?


その男の子は本当に一位かと思うほどおバカなことを言っていなくなった。
でも、女の子でも上位になれるっていう情報はあたしにとっては素敵なものだった。
もう、あたしは、絶対に碧を傷つけたくない。
そう思った。
そうして、あたしは碧が嫌ったあたしに戻っていった。
笑顔で人を貶める。
学校がきれいになって碧は登校できるようになった。
その時の碧の悲しい顔をあたしは見ないふりをした。
その顔を認識してしまったら、また、弱いあたしに戻ってしまうから。
大好きな碧に罪悪感を持たせて、あたしから離れられないようにした。
あたしは、弱かったから。
一人で立つにはここは寒すぎるから。
親友になってくれた優しい碧を巻き込んだ。
