夜暮が聞き返すと、時田は頷いて続けた。



これが資料。
バイクは国内最大手、オンダの
スペル・キャブ100。カタチ自体はよくある奴だが、問題は色だ





色?


夜暮が聞き返すと、時田は頷いて続けた。



ペールピンク、つまり薄い桃色だな





いくら白やらオレンジやら黄色やら出してるオンダでも、薄ピンクはな。俺も見たことがない。
まさか持ち主が勝手に塗ったのか、とも思ったが……





あったんだよ、本当に薄ピンクのキャブがな





!





数年前とあるイベントでコラボしたときに限定で生産したものらしい。
十数台だったか。
そっちはえらく高い値で売れたが、イベント自体は不況。バイク狂い以外には広まらなかったらしいな





つまり、特定は楽ってことですか?





だろうな。まあ、今問い合わせてるからすぐに持ち主も洗えるだろう。
俺たちはその間、この目立つキャブがどこをどう通って行ったのか、周辺の防犯カメラの映像を探そう





こんなキャブ他に走ってないでしょうしねー





……





……





……





なぜ、こんな目立つバイクを使ったんでしょうね





……





……





考えていても仕方ありません。
僕にも手伝わせてください





ああ、もちろんお願いする!





薄ピンクっぽいのを見つけて、最終的に時田さんに解析してもらえば良いですよね?





ああ。任せろ





……じゃ、昔の彼女の話して良いかな?
ごめんね、なんだか急に話したくなっちゃったんだ





それは、誰だ?





分かんない?
そりゃ俺モテるけどさ、そんなにいるわけじゃないじゃん。それに俺、誰かと付き合ってるときは浮気はしない。一途だよ?


芳賀は指をパラパラと動かした。
その指は白い。
ハンドモデルのような完璧な美しさだった。



すっごく健気で明るい女の子でね、遠距離恋愛してたんだ





僕は会えるときにはまめに会いに行ったり、距離をできるだけ詰められるように頑張ってたよ。
ちょっぴり傷を負っちゃったりしたんだけど、それでも別れようなんて薄情な気持ちは起きなかったな。
かなり本気で好きだったんだ


五日町の眉がぴくりと動いた。



あれ? 気分悪くしちゃった?





……
その話、聞こう。
お前の気が済むまで


芳賀は女の子たちに囲まれたバスケ部の主将のように無邪気な顔をした。



興味持ってもらえたなら嬉しいな


