愛ちゃんが特別だということに、ズキンと胸が痛んだ気がした。不思議だと首を傾げて
愛ちゃんが特別だということに、ズキンと胸が痛んだ気がした。不思議だと首を傾げて



おかしい。石川先輩私とできなくなって狂っちゃったのかしら。


とか言う愛ちゃんに何から話そうと頭の中を整理する。要くんがまた不愉快そうだけど、とりあえずつつかないでおこう。



あの、事の経緯をお話しすると、実は


隠すものでもないだろうと、大ちゃんが浮気したこと、石川くんが助けてくれたこと、最近の事件のことまで洗いざらい話した。
彼女の美しい顔が、驚くほど歪んでいくけれど、それでも綺麗だから本物だ。
一通り話し終わった後、愛ちゃんは考え込んで、ボソッと



……信じられない


これ。
そんなに……かな?私の中の石川くんと彼女の中の石川くんのイメージが違いすぎてる?
まぁ、でもいまはそんなことはどうだっていい。



とにかく、そこまでお世話になってるからどうしても愛ちゃんに会わせてあげたくて……会ってあげてくれないかな……


恐る恐るお願いすると、愛ちゃんは真顔に戻った。



どうして?





え、ど、どうしてって、石川くんと愛ちゃんはセフレの中でも特別な関係だったんだよね? いまでも石川くんは愛ちゃんのこと……


何故だか胸が痛い。……これはきっと師匠に彼女ができたら私との時間が減ってしまう。っていう不安なのかな。
でもわがまま言ってられないもん。
石川くんには絶対幸せになって欲しい。私の知ってる師匠は、少し彼女と違うみたいだし、素の自分を晒していたのかもしれない。それほどまでに大きな存在なんだろう。



朱里先輩の頭は、脳みそ入ってるんですか?


しかしここで、言葉を発したのは愛ちゃんではなかった。



か、要くん





大体鈍いとは思ってましたけど、ここまでとは。一緒にいて頭痛いです。僕





え、ど、どうして?





翔平先輩が好きなのは、どっからどう考えてもっ!!


いきなり天使が姿を消し、美しい顔が目の前に。



いいわ。石川先輩に会う。





え、ほ、ほんと?





ええ。その代わり、私と石川先輩が元に戻っても文句言わないでね。


……文句……いう権利なんてないのだけど。



…私と石川先輩……ほんとに激しく燃えられるのよ。悪いけど、溜まってるなら速攻でしょうね。激しい挨拶を交わすわ。





……あ、は、はい……





石川先輩が貴女に見向きもしなくなると思うけど、自業自得よ。わかった?


見向きもしなくなる。
でもそんなの仕方ない。こんな綺麗な人と隣に並んだら、当たり前のことじゃないか。
元々隣は私のものじゃ……



……黙ってるならYESってことで。今日はこれからミーコと予定入れてるし、明日にするわ。焦らしたほうが燃えそうだもの。それじゃあね。





……っ





あと、石川先輩は私を恋しがってるんだから、余計なことしないでね。天使くん


要くんに笑顔を送って、ヒラヒラと手を振った彼女の背中は、女優さんみたい。慌ててミーコちゃんが追いかけていた。
話の展開が思うよりも早く進んだから、喜んでいいはずなのに複雑な気持ち。



……お前、バカにも程があるだろっ!あんな性格ブスの女に良いように言われて悔しくないのか!?





…いや、でもいっそ清々しくない?





先輩がほんとに取られてそれで良いんだな……?あいつならやりかねない……顔の割に下品そうだったし。


相変わらず毒がすごい彼に、私は苦笑い。
でもこれでいい。
石川くんの為だ。



喜んでもらえるかな…





……俺に聞かないでください。


それなのに、どこか胸が切ないのはどうして何だろう。
