また太陽が昇った。彼女がこの街から、白井空の目の前から消えて、どれだけの日々が経っただろうか。
また太陽が昇った。彼女がこの街から、白井空の目の前から消えて、どれだけの日々が経っただろうか。
あるいは。まだ3日と経っていないかもしれない。
けれど、その事実を知る者はもういなかった。
* * *



なあ久美。これでいこうと思うんだけど、どう思う?





ふむふむ。私はこれでいいと思うのです! でもお兄ちゃん、急に何故またストリエに応募しようと思ったのですか?





いやそれがさ、俺にも分かんないんだわ。ただ、誰かと約束したような気がしてさ。それも、とっても大切な人と





大切な人!? それは、私への愛の告白と受け取っても!?





何でそうなるんだよ。あ、はるかさんはどう思う?





ええ。私ももちろんОKですよ。久美お嬢様。お二人の式にはぜひ私も招待してくださいね





いやいや何の話をしてるんだよ!? 俺のこの作品の感想を聞いてるんだけど!?





ねえちょっとあんた。さっきあんたの部屋に行ったらベットがピンクになってんだけど。いつからそんな趣味を持ったわけ? わたし達じゃなきゃもう口きいてもらえないレベルよあれ





何勝手に人の部屋に……っ!? てかあれは折れも気付いたらなってて。でも何だか変えちゃいけないような気がしたから





ああ。つまり眠れるもう一人の僕がついに目覚めたと?





だから違ううて。はあー。もういい俺先に学校行くからな


言い残して、白井は一人先にアパートを出た。残った3人はそれぞれ思い思いに言葉を呟く。



それにしても、お兄ちゃんは一体どうしてあんなに元気になったんですかね?





良い事じゃないですか。すっかり以前の様に元気になられて





まあ。やっと「おかえりなさい」って感じよ。ね、清納?





千冬様。清納とはいったい誰のことで?





え、あれ? 何か分からないけどそんな子がいたような気がしたんだけれど





あれじゃないですか? お兄ちゃんの書いた小説の主人公の女の子です





確かにご友人から清納と呼ばれていましたね





そうかもしれないわね。ってああ。もうこんな時間!? 私も早めに行かないと。じゃあね


このアパートの1日は、今日も平和に始まった。
* * *



ねえねえ白井君。学校にパソコン持ってきて何してるの?





静かに! 休み時間でも先生に見つかったら没収なんだから、あんまり騒ぐなよ宮永





ああごめんごめん。っで、もしかしてエッチなサイト見てたりしないよね。学校でまで





するかよそんな事。いいか、誰にも言うんじゃねえぞ? ストリエってサイトがあるんだけど、そこに小説を投稿するんだよ





そういえば今回新たに生まれ変わったっていって『転生コン』やってるね





え? 何で知ってんの?





何でって、そりゃ私も使ってるし。投稿だって以前のストリエの『天才コン』とかにも参加してるからね





え、嘘!? まじで? じゃあ今回の『転生コン』にも?





もう応募したし作品も完結したけど。え? 白井君まだなの? 締め切りって今日まででしょ?





だから学校までパソコン持ってきてんだよ。でも話しは出来てるんだ。後はそれを打ち込んで投稿するだけ





そっか。頑張って。でも意外。こんなに近くに同じ仲間がいるなんて。これからはお互いライバルとして一緒に頑張ろうね





ああ。よろしく頼むよ。じゃ、俺はマジでギリギリだからまた。ごめんな





まあ、君がストリエしてるって前から知ってたけどね


* * *



ねえちょっと。まだやってんの? もうすぐ12時よ?





あとちょっとなんだ。あとちょっとだから待ってくれ





もう、しょうがないわね。ほら、片手で食べられるようにおにぎり作ったから頑張りなさい





マジか! うおおおおおおおおっ!! らすとすぱーとだあああああ!!!





ふん、はしゃぎ過ぎよ





よし! 終わったぞ千冬。これで完成だ。ありがとう。俺がもう一度この作品を書きあげられたのも、お前のおかげだ





そ、そう? それなら良かったけれど。それにしても、お疲れ様。それと、お帰りなさい、空





ふふふ。やっと二人とも仲直りできたみたいですね





そうですね久美お嬢様。二人ともとっても幸せそうです。では、あちらもお疲れのようで早速仲良く眠ってらっしゃいますし、お布団をおかけしたら私たちも寝ましょうか


そうして1日がまた終わっていく。
窓も閉まっていて風はないけれど、机の上にあった原稿用紙がひらりと待って、白井の手の上に落ちた。
そこには、こんな言葉が書かれていた。
枕
の
旅
路

後半からの展開にぐっと来ました。清納ちゃんはいなくなってしまったけど、彼女の繋がりが、再び空くんに筆を持つこと、夢を思い出させてくれたんだって。それがある限り、二人の繋がりは、きっと嘘なんかじゃない。そんなことを思いました。楽しかったです!