第九話
知らぬ仏よりも馴染みの鬼
第九話
知らぬ仏よりも馴染みの鬼



ドウシタラ良イ?





だから言ったろう。BET(転生)してくれよ。





今からこのコインを投げる。
これが堕ちきるまでに来世の自分を想像するんだ。
生まれ変わったらどんな自分になっているか。





生マレ変ワル





いくぞ!





人間ニ生マレ変ワル





アノ人ニ触レル





アノ人ト話セル





アノ人ヲ愛セル





実に美しい願いの数々だった。
魂の転生があらんことを。
デーモン。





ただし、それが叶うのは今から千年後の話だろうがね。
ククク。





ひー、コインにされちゃうなんて切ねえ。





こんなジャッジメントを何千年もやってきたが、これが一番持ち運びしやすいし合理的なのさ。





おー怖ぇ。
因みにこの寸胴デモニキュリオはどの地獄に配属されるんですか?





おそら瓮熟処(おうじゅくしょ)に堕ちるだろうな。
等活地獄の三番目の小地獄。
そこの地獄の窯鍋になって罪人たちを次々に“料理”していく。





わぉ、鬼畜~♪





しかも生き物を殺して煮て食べたものが落ちやすい小地獄だからな。
料理人の性を考えると存外早く再会できるかもしれないぞ?
ただし、互いを覚えているのかまでは保証できないけどな。





そういやさっき、過去にもこの寸胴と同じようなデモニキュリオがいたって言ってましたよね?
そいつ今どこで何に転生してるとか知ってます?
すごい興味深いんですけど?





…さあな。
転生先云々は俺の管轄外だ。
全くそういうところだけは地獄耳だなお前ってヤツは。





ゲゲ!あの中華バカ意外と帰って来るの早かったな。





さあ早く赤鬼様、窓から逃げましょう!





まあ待て。


普通のワンタンスープが入った寸胴



証拠を残さずに。
何事も仕込みは大事だからな。
ククク。





ははは。俺はもうダメだ。





バカは死ななきゃ直らない…よな?


その夜、
俺たちが盗んだ寸胴デモニキュリオの
存在に気づくことすらなく、
中華料理人は裏カジノで1000万に
膨らました借金を苦に、
中華鍋にガスボンベぶち巻いて
店ごと爆発させて焼身自殺をしちまった。
文字通り≪焼きが回る≫って奴だな。
因みに自殺は殺人よりも罪が重く、
等活地獄よりももう一つ辛い
黒縄地獄(こくじょうじごく)
へと落とされる。
あたかも大工仕事のように、
獄卒たちに黒縄で体に線を引かれ、
それに沿って鑿(のみ)で削られたり、
鉋(かんな)をかけられたりして、
罪人たちは切り刻まれる。
そして熱湯で煮えたぎった鉄鍋に
こいつらはぶち込まれる。
姿形が無くなると強制的に再生され、
また最初からやり直し。
そんな所業を気が遠くなる年月、
延々と繰り返すんだよ。
あのデモニキュリオにはちと不憫だが、
男を見る目が無かったって事になるかな。
続く
