第七話
鬼の一口
第七話
鬼の一口



オ前タチハ帰レ。





What the hell!!
よくも俺の前髪を焦がしてくれたな。
地獄の業火で焼き尽くしてやる!
食らいやがれ!





帰レ





帰レ!





熱痛!
燃えるワンタンの皮が目に!
助けて赤鬼様!
まるで地獄みたいだ!





赤鬼様なんとかして下さい!
俺にはこんな化け物無理ですぅ~!





それが散々等活地獄で人間を苛め抜いてきた獄卒の言葉か?


等活地獄とは八大地獄のうちの一つ。
この世界より下の方、
1千由旬(約6千里)にある
16の小地獄からなる。
この地獄に堕ちるものは
互いに敵愾心を抱き、
罪人同士が業報の爪を
研いで争い、
血肉をかきむしりあって
骨だけ残るほどになる。
鬼(獄卒)たちは金棒や杖
で罪人(死者)たちを追いかけ殴り倒し、
あるいは鋭利な刀で
料理人のように切り刻み、
罪人たちが輪廻転生の時を
迎えるまで虐め倒すのである。



帰レ





赤鬼様逃げて!






もっと熱い方が俺の好みかな。





え~、燃えるワンタン食べちゃったよ!
しかもおかわりおねだり!?





死ネ





げげげ!上から下から炎が!
まるで焦熱地獄だ!
アライヲ様、どこかに逃げて!





帰レ





わー赤鬼様~!
死んじゃあ嫌だ~





まだまだ生温いな。
本当の地獄の業火を見せてやろう!





ヴウウウウ!





どうやら君には知性もあるようだから丁寧に説明しよう。
我々は君のような強力な力と美と意思を持ったモノをデモニキュリオ、悪魔の骨董品と名付けている。





ここ日本の習わしで言ったら付喪神(つくもがみ)といった存在が一番近い。
モノに魂が宿り、意思を持って下界に影響を与える。





しかしその実態はわが父、閻魔大王の転生ミスによるエラッタカード(誤植)なのだ。
それこそがデモニキュリオの正体。





だから俺たち地上の鬼はお前のような異分子を見つけ出し、選択を迫るんだ。
強い弱いの問題じゃない。





俺は“裁き”だ。
お前の魂がどこに進むのかを
決める地獄の入り口なのだよ。





現世に残り、力を持った道具として過ごすか、地獄の拷問器具になってスピード出世で人間への輪廻転生を待つか。
選ぶのだ。





DEAD OR BET
(生きる屍か、転生か)


続く
