アルモと別れた俺は、一度フォーレストの城下町まで引き返し、あの宿屋で一夜を明かした後、生家のあるフォーレスタ村へと向かっていた。
アルモと別れた俺は、一度フォーレストの城下町まで引き返し、あの宿屋で一夜を明かした後、生家のあるフォーレスタ村へと向かっていた。



俺に魔法の素質があるなんて…母さんからは何も聞いていないけど、実際の所は…


考えても答えの出ない水掛け論に終始しながらも、主人を失ったフォーレスト城で騎馬を拝借した俺は、全速力でフォーレスタ村へと急ぎ、数日かかった(といっても、あの時は修道院でレイスと戦ったり、ガイーラに助けられたりだったので、本来真っ直ぐ村から城へ向かえば徒歩でも3日程度の距離なのだが…)往路を2日で戻ることに成功した。
村の入口に到着すると、そこには門番としての責務を全うしているシューが立っていた。



……アコードじゃないか!どうしたんだ?その馬は、確か城の衛兵が使っている城の騎馬のようだけど…





シューか!お前が今日の門番で良かったよ…





…そう言えば、アルモの姿が見えないけど、どうしたんだ?
それに、そのショートソードの紋章……どこかで見たような気が…





その辺りも含めて、話したいことがいっぱいあるんだ


騎馬から飛び降り、鬣を撫でてやる俺。
“ブルルルルル…”



とりあえず、馬舎に向かいながら話そうか?





そうだな!





…てことは、あなたにアルモみたいな魔法の素質があって、それが何なのかを調べに戻ったって訳ね


馬舎に向かう途中で勘の鋭いサリットとも合流し、俺は村を出てから今までのいきさつを2人に話した。



思い出した!!!





シュー?何を思い出したの?





アコードの腰にある、ショートソードのその紋章だよ





??それ…森にある『祭壇の洞窟』の入口にある紋章と同じものだわ…





そうなんだよ!
それにしても、そのショートソードって、アルモが森を救ってくれた時に、お前がアルモから借りたものだったよな?
その時、そんな紋章はついていなかったような気が…





…そうか!俺もどっかで見た紋章だとは思っていたけど…祭壇の洞窟にある紋章だったのか!





…父さんがまだ生きていた頃、一緒に洞窟の前に来た時、紋章のことを聞いても『大人になったら』って言って、教えてくれなかったんだっけ…





…どうした?アコード…





いや、小さいときのことを思い出していただけだ。
…ショートソードの紋章は、別れ際にアルモからもらったんだ





…中央に『CA』って描いてあるようだけど…





Crescent Alliance…三日月同盟っていう秘密結社の略称だ





三日月同盟…聞いたことないわね





ある訳ないさ。
村長一族の俺ですら、その存在をアルモから聞いて初めて知ったんだから…





その紋章が、この村にある祭壇の洞窟の入口にあるということは…アコード、村に引き返したのは、正解と見て間違いないだろうな!!





そうだな!


そうこうしているうちに馬舎に到着した俺たちは、馬を馬舎に繋ぐと今度は俺の生家へと急ぐ。



…そう言えば、俺が旅立ってから、村で何か変わったことはなかったのか?





…お前が居なくなって、それまで別々の組織だった自警団が青年団の下についたのと、自警団の団長が俺になったことくらいかな…サリット?





シューが団長になったのか!!





へへっ。まあね!!





ちょっとシュー!!自分のことばかり…城下町からたくさんの人が避難してきて、村長さんの指示で仮設住宅が急ピッチで作られているじゃない!!





そうそう。村の人口の半分位の人たちが避難してきたぞ。村長さんから話は聞いているけど、フォーレスト城が教団に制圧されたそうじゃないか?





その件と、アコードが旅から引き返した件って、やっぱり…





ああ。大いに関係しているさ。俺とアルモのせいで城が制圧された訳じゃないけど…


俺は、その理由を話すことを躊躇した。
なぜなら、その理由はフォーレスト城が『魔法の研究』をしていたからに他ならず、それを2人が知れば、半ば強制的に俺とアルモの戦いに2人を巻き込むことになるからだ。



…





どうしたの…アコード?





…いや、何でもない





…俺たちにはまだ話せない、という訳か…





…すまない。シューの言う通りだ…





…分かった。私とシューには、あなたが話せると思うようになったら話して





ありがとう。サリット…


シューとサリットは、まだこの世界の理を知らない。
知らない方が幸せということも、この世の中には多くある。
俺は、アルモと旅立ってそのことがよく分かる気がしていた。
でも、俺に後悔は微塵もない。
俺の血に、アルモが進むべき道の痕跡がある以上、俺は知らなければならない。
俺の血筋に、一体何が隠されているのかを。
気が付くと、いつの間にか俺たち3人は俺の生家の前にたどり着いていた。



…さぁ、アコード!





…あぁ!!





ただいま、母さん!!


俺は生家のドアを開いた。
第2話 に続く
