………。
突っ込んできた車、とっさに飛び出した自分、
そして全身の骨が次々砕ける感覚。
で、今は謎の祭殿っぽいところにいる、と。
………。
突っ込んできた車、とっさに飛び出した自分、
そして全身の骨が次々砕ける感覚。
で、今は謎の祭殿っぽいところにいる、と。
ふーむ…
つまり自分はさっき死んで、ここはあの世、または異世界ってことね…。
やれやれ、短い人生だったなぁ。まあ未練とかないし別にいいけど。父さん、母さん、親不孝な娘でごめんなさいね。
でも待てよ…!ここが異世界だとしたら、
「今日から始まる異世界ファンタジー☆」って展開はマジ勘弁だぞ!?
そんなの最初のイベントで5秒以内にあっさり死ぬ自信があるからな!!このまま安らかに逝かせくれ!



やあ。突然の死だったわりには、落ち着いてるね♪





天界へようこそ!7689番さん!


…天使的なキャラの登場か?



…やれやれ、近頃の子はアニメやゲームでこういう展開を見慣れてるせいか、反応薄くてつまんないね。


勝手にがっかりされても知らんが、やっぱり死んだんだな、自分。
で?これから異世界に召喚されるの?



いやいや、残念ながらそんなアニメみたいなことにはなんないよー?
ふつーに、天国いくか、地獄に落ちるか、生まれ変わるかの3択♪


ほう、それなら良かった。
そんで、自分はどこに行くんすか?地獄っすか?



ええ…なんでそんな自虐的なの、キミ…。
地獄にはよっぽどの悪人じゃない限り落ちないから安心してよ。





まあでも、見たとこ聖人君子ってわけでもなさそうだし、キミは月並に生まれ変わりルートかな?


へえ、
パターン3・転生ルートか…。
いや、だるっ。



だるいとはなんだよー。
いいじゃん、楽しいよー、転生♪
さあ、モタモタしてると後がつっかえるから、早く受付に行くよー!


ええ~~~。
……あいつ、大丈夫だったかな…



はい、着きましたー!
ここが受付で、そこで番号言ったら整理券もらえるから、自分の番号呼ばれるまで待ってね。呼ばれたら生前の行いや希望転生先についてのカウンセリングがあって、転生先が決まったら待機列で待って、最後にあの泉で転生の儀式だからね。覚えた?


って、そんな早口で言われて覚えられっか!



いや、だってね、死者案内役の天使って忙しいんだよ?
なんせ人間だけでも1秒に3人の速さでこっちに来るし、世界中の生きとし生けるものが死んだら一回ここに来るんだから、僕らがどれだけ忙しいか、想像に難くないでしょ?ほんと、猫の手も借りたいくらいさ。


…そーなんだ。
んじゃ、ここまで案内あざしたー。



いえいえ~。
最後に聞きたいこととか、あるかい?


……あ、じゃあ一つだけ。
自分、ここに来たのは、ある女の子が車に轢かれそうだったのをかばったからなんだけど、その子は無事だったかな?



へえ、そうだったんだ~。
キミ、意外といい人なんだねぇ。
ちょっと調べてみるね。





……!!





キミ…そうか、キミだったのかい……
…なんて因縁だ……シオン君…


天使さん、名前知ってたんだ。
…ってそうじゃなくて、
なに一人で感傷に浸ってんの?



……いや、
キミはどうも余計なことをしてくれたみたいだね。


…え?



キミが救った彼女は、もともとあのときに死ぬことが定められていたんだ。
それをキミが歪めてしまった。
どちらにせよ彼女が死ぬ運命は変わらないから、じきに死神が彼女の命を貰いに行くだろうね。


……は!?
まじかよ…!!
じゃあ自分は無駄死にで、あいつも死ぬのか…!?
それは…ダメだ



どうすれば、救える…!?





どうすれば、って…
これは人ひとりがどうにかできる問題じゃ…





関係ない。
彼女は俺が守る。


あれ、なんでこんなこと…
勝手に口をついて…



……記憶を失くしてもその強情さとは、恐れ入ったね。


…?



さて、どうしたものかな…。


死神が彼女を襲いに来た時、自分が食い止めることはできないのか?



死人となったキミが地上界に降りたところで幽霊には何もできないし、転生しても虫けらか、ジャングルの虎か、運よく人間だとしても記憶を失くして赤ん坊からやり直しだね。


……クソッ!
どうしようもないのか…?



…普通なら、ね。


!?
何か策があるのか?



シオン君、いや今は「ちゃん」か。
キミ、バイトしない?天使の。


…は?



そんな怖い顔しないで?
…天使は地上界に降りて、人間に干渉できるんだよ。
昼はここで働いてもらうけど、夜になったら彼女のそばに行けばいい。大丈夫、死神は夜しか動かないから。





天界は労働力不足だし、こんな特例でも天使である僕の斡旋ならきっと通るよ!
ほら、一石二鳥☆僕ってば天才!?
さ、そうと決まれば早速、事務所行くよっ!ほら、ついてきて!早く~!!


…は、はあ……。
なんか、使われてないか、自分?
まあ、それであいつが救えるなら、何でもいいか…。
…なぜ、自分はこんなにも彼女に固執しているのだろうか……。
…わからない…
同時刻、地上界のある病院にて
かわいそうにねぇ…まだ若かったのに…
もう一人は無事でよかったけど…
仲良しだったそうじゃない、亡くなった子と。



……………





あっ!!起きた!
ハナちゃん、体大丈夫?
事故のこと、覚えてる!?





……?





あの…言いにくいんだけど…
シオンさん、ね、……亡くなったの。





……シオン………?





……誰…?


次章:明日の夜、407号室で。
