ホームルームの後、江岸が嬉しそうに言った。



工藤くん、あたしの斜め前だね


ホームルームの後、江岸が嬉しそうに言った。



…………!!


俺は何も答えなかった。
すぐにクラスの連中が自己紹介に来たからだ。
予想はしていたが、ここまで人にたかられると非常に焦る。
あわあわと応対していく俺を江岸は心から嬉しそうに眺めていた。
授業自体はそんなに難しくなかった。
幸いにも、中学から勉強はできたため、さして苦労することも無いだろう。
弱ったのは3限目の日本史。
例の浦部先生だ。
先生は教壇に立つなり



おやぁ?


とニコニコしながら俺を見てきた。
必然とクラスの視線も俺に集まる。
人の視線に慣れてない俺からすれば冷や汗ものだ。
授業中に江岸に投げ入れられた紙くずには



工藤くん、先生と何をしたの?


と、意味不明な言葉が書いてあった。
昼休み
先生が出ていくと、早速江岸が寄ってきた。



工藤くん、一緒に…





工藤、一緒に食べないか?


頬が紅潮した江岸を遮って言ったのは前の席の海道亘である。
すると、もう一人寄ってきた。
学級長の渚琴美だ。



工藤くん、まだ入学したばかりで何も知らないでしょ?今日は昼で授業も無いからこの近くの丘でクラス全員で食べようと思うんだけど


なるほど、軽いピクニックか。
あまり大人数といるのは正直嫌なんだが、ここで断ると後々面倒だ。
少しなら耐えれるだろう。



いいよ


すぐに渚はクラス全員に指示する。



今日の昼飯は近くの浅里丘(せんりおか)!各自13時までに集合!沼辺さんは時雨先生を引っ張ってきて!


…かなり強引な学級長だった。
江岸は何故か不服そうな顔をしていたが、クラス全員でという言葉を聞いてまた笑顔になった。
相変わらず、感情の起伏が激しい。



ところで、その浅里丘まで何分かかる?


江岸に聞くと、彼女は時計を見ながら答えた。



15分くらいかな


現在12:50。
…全員遅刻が決定した
