夕日を浴びてキラキラと光る金色のコイン。お姫様の横顔が描かれたコインを私は今日初めて見ました。



でもあのコインは全然おかしなところはなかったし、私も普通にやっただけで





なら君たちはこのコインを知っているか?





え?


夕日を浴びてキラキラと光る金色のコイン。お姫様の横顔が描かれたコインを私は今日初めて見ました。



いえ、全然





別におかしなことじゃない。これは僕の父親がフランス土産に買ってきたものだから





そうなんですか





じゃあ、次の質問だ。百円玉の表はどっちかわかる?





知ってますよ。数字、と見せかけて桜の方が表なんですよね





正解。ならアメリカの一セント硬貨なら?





えっと、それはちょっとわからないです……


そもそもどんな絵柄をしているのかすらよく知りません。でも私の答えを聞いて小岩くんは頷きました。



そうだ。このコインも同じように誰もどちらが表かなんてわからない。僕も知らない





えぇ!?





あのとき、君の手のひらに落ちたコインを見て、僕はすぐさま表だと言った。最初にどちらが表だ、とは言っていなかったから、持ち主である僕の判断を聞いて全員が納得した





もしこれが賭けの本番だったなら武田は僕が表裏を示さなかったことに気付いて問い詰めただろう。でも、これは勝負とは関係ない、と気にもせず僕の警告を聞き流してしまった





警告?





そう。これは相手に四つの組になったカードから二つを選ばせるのと同じトリックだ。他人の行為を介入させたように見えて、実際は自分がその成否を握っている


小岩くんはもう一度手に乗せた金色のコインを私に見せてくれました。お姫様の横顔とその裏は百合の花が描かれていました。



このコインには表裏はない。君がトスした時点では、ね。そして君の手のひらに落ちた瞬間に上にいたお姫様が表になったんだ





……すごい


私はまるで魔法にかけられたみたいでした。あれほど小岩くんが魔法なんてない。トリックだと言って丁寧に説明してくれたのに。それでもまだ私には彼が魔法を使っているのではないかと思わせるほどに衝撃的な出来事でした。



あの、小岩くんって一体?


私の質問にもう答えてくれることなく、小岩くんはまた自分の席に戻ると、ブックカバーのかかった本を開いて、何を言っても話を聞いてくれませんでした。



ねぇ、小岩くん。どうしてそんなに簡単に見破れちゃうんですか?





……





もしかしてご両親が刑事さんとか?





……





それとも小岩くんが高校生名探偵だったりするんですか?





……


私の頭からはもうすっかりシャーロックホームズは抜け落ちてしまっていました。
だって、私の隣の席には魔法使いの名探偵が座っているのですから。
