時計塔の上ではエドワードと汐音がイルミネーションを楽しんでいた。
時計塔の上ではエドワードと汐音がイルミネーションを楽しんでいた。



すごい、キラキラ光っています


汐音は身を乗り出して眼下に広がる光の絨毯に目を輝かせていた。



だろ?





里の子供たちにも見せてあげたいです





汐音……はしゃぎすぎだぞ





こんなにステキなものとは思いませんでした。エドワード様が興奮するわけですね





そんなに興奮していた?





はい





……ところで、焔様は大丈夫ですかね?


数時間会っていない主の姿を思い出す。



時計塔は分かりやすい場所にある。





正面からは入れませんよね。関係者以外立ち入り禁止ってなってますから。





関係者とは、即ちサンタローズ。
時計塔に入る方法はサンタローズの恰好をすれば良いだけのことだ……難しくはない





そういえば、立て札に書いてありましたね


サンタローズの恰好でお進みください



買い物だって。サンタローズなりきりセットが売っている





ですよね。焔様でも、それくらい出来ますよね


買い物にも何度か同行しているはずだ。心配はないのだが、何だか不安になってしまう。



私といるのに、他の男の話をするなんて良い度胸だよね





すみません





良いけどさ


エドワードは汐音の頭を撫でる。
突然、ガチャリと扉が開いた。
二人は同時に振り返る。誰が来るのかは予想していた。現れたのは白い袋を背中に背負ったサンタローズ。



……





やっと来たか


そうエドワードが肩をすくめる。
だけど、次の瞬間エドワードに起きたことは誰も予想できないことだった。



え


汐音も茫然と立ち尽くしている。現れたのは主だった。それは、そのはず。だけど……
サンタローズはエドワードを押し倒していた。
仰向けに倒れるエドワードは目を丸くしたままサンタローズを見上げた。



えっと……ホムラサーン?





お兄様!





お兄様?


白鬚のサンタローズは焔の声で確かにそう言った。



まさか、お前エリスなのか


エドワードが目を見開く。



はい、たまたま賢者様の姿をみつけて。身体をお借りしました


その説明だけでは理解ができない。



憑依したってことか。ど、同意の上で………なのだろうな





説明している時間はなかったので。エヘ





その顔で、可愛く首を傾げないでくれ





酷いわ。私、ノエルの奇跡で魂だけ、こっちの世界に来ているの。どうしてもお兄様に会いたかったの、お兄様とイルミネーションが見たかったの





あの……





ややこしい状況だけど、紹介するよ。今、焔の中には幽霊が入っているんだ。それは私の妹のエリス





幽霊って……





エリスは去年病気で死んでしまった





そうだったのですね





ノエル祭には【ノエルの奇跡】という奇跡が起きるんだよ。
私は、その奇跡でエリスが一夜だけ帰ってきて欲しいと願ったんだ……





それでエリス様の魂は帰って来たのですね





彼女が亡くなる前に約束したんだ。ノエル祭に行って、一緒にイルミネーションを見るって





ノエルの奇跡、夢物語だと思っていたのに……まさか、本当にエリスと会えるなんて





お兄様!





嬉しいのだが……





イルミネーションを見たいと言っていたのは





エリスとの約束を果たすため





そうだったのですね。私たちを誘ったのは?エリス様の代わりでしたか





ひとりじゃ寂しいから汐音や焔を巻き込んでしまった。本当にエリスの魂が来る保障もなかったしね。
まさか焔の身体に入って現れるとは思わなかったけど……





……エリス………どうしてコイツの身体なのだ





下手をすると国家問題に発展しかねないのに。賢者様だぞ、ヤマトでは王様と同じくらいに偉い人だ





だって、この人しか私の姿が見えなかったから


姿はサンタローズだが。汐音にはエリスが悲しそうな顔で俯いているのが見えた。



でしたら、私の身体を使ってください


汐音の申し出に、少女は顔を上げる。



あなたは?


汐音は膝をついて、頭を下げる。



私は賢者様の従者をしています汐音と申します。私にはエリス様の姿が見えます。エドワード様にとてもよく似た美しい姫君ですね





褒め過ぎよ………ほんとうに、身体を使っても良いの?





もちろん……





貴方の身体じゃあまり過剰なスキンシップはできないわね





私は歓迎だ……ぐぁ





?





お願い、その身体を少しだけ借りるわ。大丈夫、少しだけ眠っているだけだから





はい……エドワード様と楽しんでくださいね





ありがとう


