国定忠治の長ドスを!
エラはらら子に渡す!



……あーあ……さい、ごに、大、貴族、金、髪、美ショ、タの、ちんちん! しゃ、ぶり、たかっ、た、なあ……





Scheiße…………





やった! 完成!





ふーむ……ですが、もう少し強度が欲しくありませんか……?





ああ。
だが、鋼鉄部品を使えば重量が問題になる。





強度とこの軽さを両立させる素材は、今のところ実在しないからね……理想の素材を研究開発する時間はないし、これはベストでないにせよ、ベターといったところじゃないかな……





うーん……





………………





ちょっと待って!
通りすがりのアイドルちゃん!





驚いたなあ。ニカブ被ってたのに、どうしてボクがアイドルだってわかったの?





だって私は刀鍛冶だからね!
ね、腰に差してるその刀、見せてくれない?





いいよ☆


国定忠治の長ドスを!
エラはらら子に渡す!



……やっぱり。





ね、アイドルちゃん。この刀、私にくれない? これを材料にして、私おもちゃを作りたいの。





刀を材料に!?
しかし鋼鉄部品を使えば重量が……





普通の鋼鉄ならね。でもこれ、この世の、現実の金属じゃないし。
これは、江戸時代のヤンキー伝説に出てくる国定忠治が使っていた刀。忠治の見た、途方もない夢で出来た刀。
想像力の及ぶ限り、どんな特性にも変わってくれる夢の金属だよ。


ヤンキー聖文書!
7章第12節!
「忠治の夢見ること、
公儀・朝廷をも己がパシリとせむ。
大言壮語も甚だしい、
狂気とまごうばかりの夢なり。
壮大なる夢は
げに恐るべき巨大さゆえに
その質を変化させ、
ついには刀にその身を変えり」
おお! おお! おお!
ああ! 神々よ! こは真かや!?
伝説は本当なのか!?
この世の物では再現し得ぬ
超性能の金属の存在さえも!



なるほど。それなら、最高の素材となることでしょうね。





そんな超素材を使えるなら、基礎設計を一度見直してみるよ……!





ちょっと待ってよ! その刀はボクが拾ったんだよ! 勝手に使うとかやめてくれる!





かわいいアイドルちゃん、おねがい♡
この刀ちょーだい♡





おっけい☆





なら、なんでさっきは反対したんだい?





気☆分♪
もともと、なんかヤバそうだから持ってきたものだしね。世界を救うおもちゃの材料になるなら、拾ったボクとしても大歓迎だよ☆


その夜!
地球! 日本国!
呑竜家!



じゃあな! かあさん! レン!
おれ、ちょっくら月に行って、オスカーの姉ちゃんをやっつけてくるからさ!





何言ってるのカケト! 世界中の軍隊や警察ががんばってることなのよ? あなたが何をできるっていうの。少しは現実見なさい。





世界全廃とか、めちゃくちゃイカれた事件なのに、まっとうに現実見たってしょうがないだろ!





そういう考え方もあるかもしれないけどさ……僕はカケトにケガしたり死んだりしてほしくないよ。





レン! けど! このまま何もしないでいられるかよ! 世界がもうすぐ終わっちまうかもしれないのに!





ピンポーン♪





はーい、ただ今。





こんばんは、ひーちゃん。





あらまあ、サクさん! どうしたんですか……?





妻も一緒でーす♪





ああ奥様。これはどうも。お宅のご主人にはいつもお世話になっております。





……私もいる、けどわざわざ存在感アピールしなくてもいいか……





ちょっと、君の息子の手伝いがしたくてね。世界を救う手伝いがさ。
カケト君はまだ起きてるかな?





起きてるぜ。
おっちゃん、おれになにか用事?





新しいヨロイビートルを届けたくてね。
ドラゴファイアの弱点を改良して、夢由来の超金属を使って作った、最強のヨロイビートルだ。あるいは最強のトイかもしれない。
――ドラゴエンペラーだ。





ドラゴ、エンペラー――!?


カケトはサクゾウから!
ヨロイビートルを受け取る!
世界を統べる竜と!
皇帝の名を持つトイを!
ドラゴエンペラーを手にした瞬間!
カケトの身を電流が駆けた!
途方もない野放図さを持つ夢の!
歓喜すべき可能性に!
起こり得るすべての神秘が!
ドラゴエンペラーの機体にぞ!
秘められているかのごとき錯覚だ!



う、うおおおおおお!





おっちゃん! これ! すげえよ!
このトイもおっちゃんが作ったのか!? おっちゃんすげえなあ!





何、俺は別に大したものじゃないさ。ただ、俺の周りにはすごい奴がたくさんいてくれる。そいつらが手伝ってくれたから、俺はすごいものを作れたのさ。





こんなのがあったら絶対マーヤに勝てる! なくてもやるつもりだったけど!
おっちゃん! かあさん! レン! かや子! かや子のかあさん!
おれ! 月に行ってくるよ! マーヤをとっちめる! みんながいてくれる世界を終わらそうだなんて、おれはみとめねえ!





おう! 応援してるぞ!





……もう、止めても無駄でしょうからね。気をつけてらっしゃい。ハンカチとティッシュはちゃんと持っていきなさい。





何も策がないなら止めるつもりだったけど……新型とカケトの力なら、きっとやれるよ。





気を付けてね。ちゃんと、帰ってくることを考えるんだよ?
無事に帰ってきたら、唐揚げでもハンバーグでもなんでも、好きなごほうびあげるからさ。





ふぁいと♡ ふぁいと♡





ところで奥さん。あのカケト君、って子のことだけれど。





うちの子がどうかしました?





あの子のお父さんは誰なのかなあ?





……とてもいい人です……最近では、あの子と遊んでもくださいますし。





その言い方は、私の想像通りで合ってるってことかな♡





……そういえば、私なんでカケトのこと心配しちゃうんだろう……? お父さんの世話に慣れすぎちゃったかな……?





よし! おそらくは立派な大人として、カケト君に接することができただろう!
……どうも俺はヒモ体質が抜けないというか、女性には基本的に甘ったれてしまうから、娘には苦労をかけてばかりだが…………
息子がいたのなら、俺も違ったのかもしれんな……


