僕が叫べば負けじと偽物も応戦する。堂々巡りだった。



藤峰、黒須、信じてくれ! 僕が本物だ!!





みんな騙されるな! こいつは偽物だ。僕の方こそ本物だぞ!!


僕が叫べば負けじと偽物も応戦する。堂々巡りだった。



じゃ、じゃあ私が綾瀬先輩と戦ったスポーツは?





テニス!!





テニス!!





じゃあ、俺がお前とカフェで話した時、俺が食いついた食べ物は?





クスクスのカレー!!





クスクスのカレー!!





記憶は二人とも一緒何です。意味がないですよ、こんな質問





それもそうか…


二人も策が尽きたようで、困った顔をしている。
偽物の方を見ると、にやりと笑ってこちらを見ていた。
僕だけは偽物が分かる。なのにそれを証明できない。



くっ


悔しくて毒づく。
そんな時だった。



おやおや都大樹さん、お困りのようですね





やっと、ようやく、私の出番のようですね





お前は…どういうことだ? お前にこの状況がどうにかできるのか?





当たり前じゃないですか。私はそのためにここにいるのですから。あなたのことが嫌いなのに、それでもあなたの傍にいるのはそのためですよ





そういえば、初めて出会った時に、正面切って嫌いって言われたっけ。分かった。僕はどうすればいい?





では、私の言うことを彼らに伝えて下さい





藤峰、聞いてくれ





何だ?





僕が急に飛び出した後、観覧車まで行って美樹ちゃんを迎えに行ってくれてありがとう。あの時、理由を離さない藤峰に思わず怒鳴ってごめんって、美樹ちゃんが言ってたよ





どうしてお前がそのことを…お前には話していないのに





それと、くろゆきちゃん。美樹ちゃんはそう呼ばれてたんだよね? 私のわがままに付き合わせて、こんなところまで連れてきちゃってごめんね。でも、ありがとう





どうして先輩がそのことを?





はは。そんな嘘で騙されちゃいけない。だってそんな事、僕は知らないんだから。嘘に決まっているよ





いや、決まりだな





ですね





偽物は、お前だ!!





ざまあねえですね。都さんの真似なんかするからですよ。さあ、この花を彼に、あの偽物に


僕だけに見える、その花を受け取る。
すると、二人も反応した。



何ですかそれ?





何だその花は?


一度僕の手に触れると、それはみんなにも見えるようだ。
ゆっくりと、偽物の元に近づく。



さあ、偽物。お別れだ。僕たちは元の世界へ帰る





甘いぞ! 元の世界に帰るには、一人一本のミヤコワスレが必要だ。それを分かっているのか!? 俺を見逃せば、手に入れ方を教えてやってもいい!!





問題ない。僕が二本、藤峰と黒須が残り一本ずつ持っている。だから、さよならだ





く、くそ! 今だ! こいつらの希望を奪ってしまえ!!


偽物が何かをする前に、僕は偽物にもらった花を押し付けた。淡い光になって、彼は消える。



みんな、これで終わっ





危ない都っ!!


振り返った僕の前で、転がる藤峰。彼を押し飛ばしたそいつは、藤峰から奪ったであろうミヤコワスレに、火を、付ける。



くそ、奪われてしまったか。だけど、二本持つ都を守れたのは良かった。まだ、大丈夫だ


冷静にそう言った藤峰、だけど、僕の耳にはほとんど入って来なかった。
燃え散ったミヤコワスレを見て笑みを浮かべるそいつは、僕をみて口を開いた。



やあみーくん。君が持つ二本の花も、燃やさせてもらうよ?


最期の闘いが始まる。



・・・


* * * * *
こんにちは。ご覧頂きありがとうございます。
一話から登場していた不思議な彼女今回の話で、少しづつ正体が分かって来たのではないでしょうか?
とすると、少し不穏な空気も感じてしまいますが。
そしてまたまた、偽物らしき人が出てきました。予想が当たった方は、こっそりと微笑んでください( ´∀` )
それでは、今回はこの辺りで失礼します
(*- -)(*_ _)ペコリ
