八咫烏
八咫烏
イツセを失ったイワレビコと久米兵は進路を迂回し、熊野(三重県)の森に着いた。
すると、いきなり目の前にでっかい大熊が現れた。
しかし、
襲われる！
と思い身を構えたが、大熊はすぐ藪の中に消えてしまう。
･ ･ ･ なんだったんだ？今の。
イワレビコが動揺していると、
後ろで誰かの倒れる音がした。振り返ると、パタパタと久米兵が倒れて行く。
･ ･ ･ まずい！大熊の毒気にやられた！！
と、気付いた時には既に遅く、彼もすぐに意識が遠のき倒れてしまう。大熊は荒ぶる神の化身だったのだ。
彼らの意識が無くなってから、かなりの時間が経った。
すると、どこからか立派な剣を持った男が息を切らしながら彼らの元に走って来た。
久米兵を飛び越えイワレビコの前まで辿り着くと思いっきり剣を振りかざす。
･ ･ ･ ！！
ハッ ･ ･ ･ ！！
その瞬間、イワレビコは目を覚ました。
長いこと ･ ･ ･ 眠ってたのか ･ ･ ･ ･ ･ ･ ？
男は頭を下げると膝を付き、イワレビコにその剣を差し出す。
どうぞ、お受け取りください。
えっ、あぁ・・・
イワレビコがその剣を受け取ると、イキナリ『シュン！』と空を切るような音を立てる。
すると森の奥から、獣の叫ぶ声が聞こえてきた。先ほどの熊神が勝手に死んでしまったのだ。
その声と同時に久米兵が次々と目を覚ましていく。
えぇっ！？なにこの剣？？
すごっっ！！
てか、あなたは一体 ･ ･ ･
はっ、私は国つ神のタカクラジと申します。タケミカヅチ様の命で参りました。
宝クジさん？
･ ･ ･ なんか、夢のあるいい名前だな。
いえ、タカ『ク』ラジです。
え？あ、悪い。えっと ･ ･ ･ そしたら、その剣はタケミカヅチ様がタカクラジさんに？またこっちに降りて来たのか？
いえ、タケミカヅチ様にはお会いしていないんです。実は夢を見まして ･ ･ ･
タカクラジは、その不思議な夢の話しを始めた。
･ ･ ･ 私は気がつくと、広い部屋に雲がかかったような、不思議な空間を覗き込んでおりました。
そこには見るからに高飛車な顔をした女の子と、ふわふわした感じの男性が深刻な顔をして座っておりました。
そして、いきなり部屋の戸が開いたかと思うと、ヤンキーみたいな男が入って来て、２人の前で膝を付いたのです。
タケミカヅチっス！！アマテラスの姉御、高木の旦那、お呼びでしょうか！！
そのお名前を聞いて驚きました。高飛車が天照大神様で、ふわふわが高木神様だったのです。お２人がタケミカヅチ様を呼び出されたご様子でした。
タケミカヅチさん、急に呼び出しちゃってすみません。葦原の中つ国が最近、騒がしく乱れているという話しは聞いていますね？
ウっす！
そこで ･ ･ ･
と高木神様が言いかけると、天照大神様が取り乱したご様子で ･ ･ ･ ･ ･ ･
それでね、私の子が熊野で困ってるらしいのっ！
へ？
ねぇ、どうしよう！！あの子達、大丈夫かなぁ？？悪い国つ神にいじめられてないかなぁ？？？
はぁ ･ ･ ･
葦原の中つ国はあんたが平定させたんだからさぁ、あんたが、あの子達のこと助けに行ってあげてよっ！！
はぁ？？
いや、でも、せっかくお子さんたちに任せたんスから、そこは見守ってやるのがスジってもんじゃないっスか？？過保護は良くないっスよ。
ぶぅ ･ ･ ･
でも心配なのっ！！！
んーー ･ ･ ･ わかりました。したら、わざわざ俺が行かなくても、出雲で使った剣があります。それを熊野に下ろしてやりましょう。
熊野には、タカクラジっていう国つ神がいるんス。アイツの倉の屋根に穴を空けて剣を落としておいて、目覚めたらイワレビコの坊ちゃんに献上するよう伝えときます。
そぉ？本当はタケミカヅチが行ってくれると安心なんだけど ･ ･ ･ でもなんか、夢のある良い名前ね。じゃあ、その人にお任せしようかな ･ ･ ･ 。
よろしくね、タケミカヅチ。
はっ！！
そういうと、タケミカヅチ様は天照大神様に一礼をし、顔を上げると、そのままスっと私の方を見たのです。
彼らからは見えていないと思っていた私は驚いて跳ね上がりました。
そこで目が覚めるといつもの私の部屋で ･ ･ ･ 慌てて倉を覗きに行ったら屋根にはぽっかりと穴が空いていて、夢に出たこの剣が置いてあったので、『これは夢じゃない！！』と思い、急いでこちらに参った次第です。
アマテラス様 ･ ･ ･ オレらのこと忘れずに見守ってくれてたんだ。
頼れるイツセの死で、拠り所を失っていたイワレビコの心が、なんだか急に軽くなった気がした。
たいそう心配しておられました ･ ･ ･ 。
そっか ･ ･ ･ ･ ･ ･ よかった。
オレはてっきりニニギ様がブスを追い返したせいで見放されちまったモンだと思ってたから ･ ･ ･
へ？
え、あ、ごめん。身内ネタだった。
そっか。 ･ ･ ･ ･ ということは、この剣はあの時のものなんだな ･ ･ ･ ･ ･ ･ あの出雲の波打ち際で ･ ･ ･
タケミカヅチ様のケツにブッ刺さった、あの ･ ･ ･ ･ ･ ･
へ？？
あっ、いや、悪い。 ･ ･ ･ ･ ･ ･ これも身内ネタだったわ。
この剣はやがて神格化し、フツノ神と呼ばれるようになった。今でも奈良県の石上神宮に祀ってある。
タカクラジさん、助かったよ。じゃあ、これで。オレらは先を急ぐ。
あ、もう少しお待ちください！
ん？まだ何か？
はい、実は、ここまでの道中、私の頭の中にスピーカー越しのような声が響きまして ･ ･ ･
･ ･ ･ ス ･ ･ ス ･ ･ ･ テステス ･ ･ ･ あーあー。どもー聞こえますかー？？高木ですけどー ･ ･ ･ ココ、タカクラジさんの脳みそで大丈夫ですかね？
大丈夫そうですかね。
いやー ･ ･ ･ 熊野なんですけど、他にも荒々しい神がいっぱい住んでいましてね。イワレビコくんにあんまり山奥とか入らないで欲しいんですよ。
高天原から八咫烏を送るんで、道案内に使ってください。それまでみんなには待機するように伝えておいてください。お願いしますねー。
よし。これでちゃんと伝わったのかな？
･ ･ ･はぁ。オモヒカネが降りちゃってからずっとこんな仕事ばっかだy ･ ･ ･
･ ･ ･ ･ ･ ･ とのことで ･ ･ ･
そ、そっか。 ･ ･ ･ なんか ･ ･ ･ 上は上でいろいろあるんだな ･ ･ ･ ･ ･ ･
それからイワレビコは、
高天原ってどこらへんにあんのかな ･ ･ ･ 。
とか考えながら、しばらくの間、ぼーっと空を眺めていた。
この頃には世界の形も出来上がっていたので、葦原の中つ国から高天原を見つけることができなくなっていた。
やがて一羽のカラスが飛んで来た。
そのカラスはすーっとイワレビコの肩に止まる。よく見ると足が三本も生えている。
まさか、このカラス ･ ･ ･ ･
サッカー日本代表のエンブレムの元ネタ！！！
フン！俺様が案内してやるよ。ついて来なっ！！
しかも、喋った！！
イツセの死から嫌なこと続きだった一行は、新たな仲間にテンションが上がった。
こうして高天原のサポートを受けながら、イワレビコ達の旅は始まった。
嘘ォオオォ！！！？
稗田阿礼様の作品に小生如きの挿絵が出でるとは！！？
これは夢ですか！？
あ、あ、あ、ありがとうございます！！
最後まで楽しみにして良い子で待ってます！！！！！
トップにある、鳥にたかられ過ぎてるタカミムスビのイラストのポワポワ感に全部持ってかれましたw
八咫烏、一説によるとアヂスキタカヒコネの祖父になるそうで、さらに一説によると、その祖父の曽祖父がタカミムスビなのだとか･･･
ロマン過ぎて脳が浮いてしまいそうですヾ(°ω｡ヽ≡ﾉ°ω｡)
吟鴉さま
イラスト、いい感じにカラスを飛ばしていただき、ありがとうございましたぁぁ！！！おかげさまで、ピッタリのシーンで使えました｡ﾟ(ﾟ＾ω＾ﾟ)ﾟ｡
最後まで楽しんでいただけたら、嬉しいです！！
ナムルさま
高木さんには、常にたくさん鳥にたかられて欲しいです（笑）
タカヒコネ兄さん、一瞬しか出てこないくせにっ！！一説からして愛されてる！！！
ロマンしかない(((o( ˆoˆ )o)))
