緊迫感の薄いリュウが、若者の腹を蹴りつけた。意外にも武闘派だ。そしてこうなってしまっては、この場を治める事は出来なくなってしまった。



女相手に複数で掴み掛かるとかは
流石にスルーしないでしょ。





て、てめぇ小僧~。


緊迫感の薄いリュウが、若者の腹を蹴りつけた。意外にも武闘派だ。そしてこうなってしまっては、この場を治める事は出来なくなってしまった。



なめられんなっ!
やっちまえ!


リュウと若者、そして役人も巻き込んで喧嘩が始まる。リュウは威勢のよい若者相手に奮闘している。



馬鹿ばっかりね。


銀髪の女は、目の前の喧嘩を冷めた視線で眺めて言った。喧嘩はリュウと若者だけではなく、役人も入り混じって大乱闘になっている。



そしたら、
私は好きにさせてもらうわ。


銀髪の女は軽いフットワークで、崖崩れがあった土砂を進み始めた。足場がもし崩れたりすると、大怪我も容易に想像出来る。



危険です。
あまり無茶しない方が……





私には行かなければならない
理由があるのよ。


銀髪の女は既に背の高さを越える所まで登っている。一見、無茶な性格に見えるが、しっかり足場を確認しながらの慎重な足運びだ。



だ、大丈夫かなぁ~。


ハラハラするメナをよそに、若者達はまだ暴れている。役人は防戦一方。市民の安全を守る立場の彼等は、手が出せないのだ。ところが、一番腕っぷしの強そうな役人が、我慢しきれず反撃に出た。



おいおい、大人が本気
出しちゃまずいっしょ。


リュウは軽口を叩きながら、若者のパンチを涼やかに躱した。



うぎゃっ!


威勢のよかった若者が役人の横蹴りで吹っ飛ぶ。その先には、銀髪の女が登る崖崩れの土砂があった。



あ、やばいっ!





っく!
ま、まずいわ、足場が!





ああっ!


若者が吹っ飛ばされた土砂が少しづつ動く。異変を感じた時には、止めようのない勢いで崩れだした。銀髪の女は足場を失いかけたが、間一髪跳躍して難を逃れた。



ふう。でも、もうすぐで
越えられていたのに……。





危ない!


銀髪の女の頭上から小岩が降ってきていた。いち早く気付いたメナが庇い、大事には至らなかった。



……全然気付かなかった。
礼を言うわ。





……よかったぁ、
頭にでも当たったら
大変だもん。


その場に居た全員が息をのむ出来事に、乱闘騒ぎは落ち着いた。乱闘以外の怪我もなく、全員無事だ。



あれ? ハルは?
ハルがいないわ。





ずっと一人で、作業してたぞ。


そう、乱闘の中、リュウは見ていたのだ。乱闘そっちのけで岩や石を運ぶハルを。今ここに見当たないって事は、土砂にのまれてしまったかもしれない。



ぅ~





うん?





っすぅ~





え?





ここっすよぉ~





分かった、下だ。





ぱぁっふぅあっーっす!





ハル! 良かった。
って、そこから!?





まさか私の足元にいたなんて。


ハルは土の下から一気に頭を出した。どうやら銀髪の女の足元だったらしい。今、調度この場面に誰かが通りかかれば、顔以外を土中に埋められ拷問されている様にしか見えない。
そしてハルは土中から引き出された。土まみれだったが、大した怪我もなかったようだ。



よっし、それじゃあ
続きをするっすよぉ♪





え!?





まじか、こいつ……





いや、ちょっと休めって。





は? 喧嘩をか?





違うわ。
道を開ける作業の事よ。





ったく、よそ者だってのに。
そんな頑張んなくていいんだよ。





よそ者!?





じゃあ、なんで
そんな事してんだ?
何も得しねぇじゃねぇか?





恩返しだってよ。
宿とメシのな。
いいって言ってんのに。


ブンブン腕を回し、張り切るハル。唖然とする若者達をよそに作業を再開し始めた。



それじゃあ、私も始めよっかな。





やれやれ、元気だな二人共。


そう言いながら、リュウも二人の後に続いた。



よそ者のくせしやがって……





お前らだけで
やってんじゃねぇよ。





俺にもやらせろ。


さっきまで暴れていた若者達がハル達の作業を手伝い始める。リーダー格の男に続き、街の若者達が続々と参加し始めた。さらに役人も手伝い始める光景を、銀髪の女は目の当たりにする。



す、凄い。
この人数なら一日で
道を開けれるわ。





一緒にやるっすよ。
皆でやれば楽しいっす♪





あなたは一人でも
楽しそうね。
私は、
ベルゼビュート・ユフィール。
皆、ユフィって呼んでるわ。


銀髪の女は初めて笑顔をこぼした。それはハルに対して何よりの礼だった。そして腕まくりしてから、作業の輪の中に入っていった。

ラストのおまけイラストにもあるように、COMICO様に移転します。現在、お試しでショートストーリー『埋没』を投稿しました。
暗い・笑えない・理解不能と三拍子揃った作品です。何作かショートを書いてから、マギアフィラフトを連載していきます。今後もよろしくです。
更新お疲れ様です。
実は昨日、更新後すぐに読ませてもらいました 笑
背景、イラストともに良いですね〜♫comicoも早速登録しました!ストリエ更新、残りわずかですが楽しみにしてますね〜♫
実はさり気なく、ハルの表情パターンを一つ追加しています。comicoでは、表情を吹き出しで出せないのでものたらない部分もありますが、変わらぬ愛読を願います。
(о´∀`о)更新お疲れ様です♪
今回のハル、良い味出してますね~★
ハルの常に前向きな性格は、周りの人達も笑顔にしちゃうね♪
コミコの『埋没』も読みました♪
こっちはガラリと雰囲気変わって考えさせられるお話しでした。
ストリエでの更新は後1回ぐらいかな?
今後も宜しくです♪
ども~(*´∀`)♪
ハルの前向きで笑顔を引き寄せる性格を感じて貰えれば幸いです。長編なので完結なんて有り得ませんが、新章だけでもしっかり終わらせるようにします。
『埋没』は一見すると只の日常っぽいのですが、分かりにくいラストシーンから考えると、様々なシーンが想像出来る構成にしたつもりです。ハッキリと明記していない分、読者に想像して頂く余地があるわけです。短編なので繰り返し読んで貰えれば何か発見があるかもしれません。
キャラ毎との個性が見えるシーンで見てて面白かったです♪能天気なハルの性格が最終的に解決して思わずニンマリする話でした!これからも楽しみにしてます♪