忠誠が我を縛る、忠誠を第一に。(リチャード三世のモットー)



「で、狙撃犯についてはどうなの、リッチーくん」





「それはトマス殿に聞いてください。黒幕は消しました」





「家族に類は及んでないだろうね」





「もちろんです」





「情報部か」





「ウォルターさんです」





「あの、ギルバートくんの…」





「はい」





「それは君の策略かい」





「そう取ってもいいです」





「彼はすると思ったよ」





「殿下」





「君がさせるとは思わなかったけれどね」





「ギルバートさんの怪我について負い目をおってますからね、ウォルターさん」





「不可抗力だ」





「そうは取りませんよ、ああいう人達は。殿下…フランシーの従卒」





「何故、その報告が遅いんだ」





「亡くなってますから、理由は」





「私をかばったから、だな」





「はい」





「かばわれるような人間か、私は」





「あなたはそういう御方です。僕も兄もトマス殿もあなたのために命投げ出す覚悟は出来ております」





「やめてくれ」





「いいえ、総裁に何かあっては宇宙軍の名折れです」





「リッチーくん」





「僕のモットーは今はあなたに、です。お忘れなく」


忠誠が我を縛る、忠誠を第一に。(リチャード三世のモットー)



「そんな…」





「たいしたことはないとはおっしゃらないでください」





「解った…」





「意地でもこの世界の安全は守ります。総裁が任務につけない状態でも、我らは…」





「それがまともな組織のあり方だ、長がいようといまいと組織は稼働していて当然のものだ…」





「はい」





「トマスを呼んでくれ、話がしたい」





「はい。全体の指揮、ずっと執りながら、おそばに控えていましたよ」





「だろうな」





「あー、そうそう、夢枕に出てくれなかったとすねてましたけどね」





「あいつの夢枕に出られると思うか、リッチーくん」





「思いません」





「そう私も思う」





「トマス」





「報告します」





「それは…いや、聞こう」





「三世陛下から聞いてます、黒幕は消したと。それで、ですね」





「ウォルターのことか」





「彼は慰問団付属の護衛官として働くことになってます」





「そのことで彼は何か言っていたのか」





「いいえ。なにもいうことはない、とだけ聞いてます」





「政府の発表は」





「急病により逝去という形を」





「このことは内密に」





「していますよ、彼もプロですし」





「家族には」





「もちろん知らせていません、どころか…あまり家族関係よくありませんね、彼」





「そうだったのか」





「離婚寸前だったとか。ああ、そう子供も何か…」





「あったのか。もう今となってはどうでもいいが」





「そうですね。割り切るしかありません」





「おまえ…」





「三世陛下に言われましたし、ギルバートくんにも言われましたから、諦めますよ」





「そうか、すまなかったな」





「いいえ」





「まさかと思うけれど」





「私以外、あなたと関わりのあった者殆どがあなたの夢見ています」





「…夢、か」





「はい」





「トマス、怒っているのか」





「いいえ」





「そういえば、力を貸してくれた人がいる…」





「どなたですか」





「この世界に来て知り合った、今はもういない人だった」





「…そうですか」





「夢に力を与えてくれた人は…もういないし、生者の世界では何もしない…」





「殿下」





「私は一人ではない。それだけだ」





「三世陛下には無理だと言われましたが、夢の中でもあなたに会いたかったですよ」





「そうか」


夢にだにあふ事かたくなりゆくは我やいを寝ぬ人や忘るる
夜昼と いふわき知らず 我が恋ふる 心はけだし 夢に見えきや
