


はるばる来たぜ卒業旅行ー!





無事に卒業出来て安心しました





でも、小絹は大学院なんだよな?





ああ、院生になる





卒業したと言っても、僕も今度は留学ですし





なにげに就職してんの俺だけなんだよな





結局、仕事はなんなんだ?





俺?博物館の学芸員だよ





書道は続けるんですか?





ああ、細々と続けながら仕事する。
俺の就職先の博物館、結構書があるみたいで、本領発揮出来そうだよ





学芸員も大変だと聞くが、無理はしないでくれよ





お?俺のこと心配してくれんの?





な、なんだ、心配して悪いか





ふふっ。ふたりとも相変わらずですね





そう言えば、お前も留学とのことだが、治安は大丈夫なのか?





そうですね、留学先の台湾はたまに不穏なことがあるみたいですけど、でも、行ってみないとわかりませんね





くれぐれも気をつけるんだぞ





はい、お気遣いありがとうございます





それにしても、卒業旅行で遊び回るんじゃ無くて、田舎の古民家でひと休みってのがなんか、歳くったなって感じするな





あの、僕達まだ20代前半ですからね?





遊び回るだけなら東京で十分という感じはするがな





少し、都会の喧噪から離れてみたかったんですよね





あー、そう言えばお前、ずっと都会育ちだもんな





ところで、今回の旅行では、僕達が書いた小説を朗読してくれるんですよね?





ああ、今までなかなか機会がなかったから一気にやるぜ





今までに書いた小説が載った部誌を持って来たが、時間は足りるだろうか





あ、僕も今までの分全部持って来たんです。
時間は大丈夫ですかね?





まぁ、3泊4日だし、ひねもす読んでりゃ終わるだろ





どうします、ひと休みしてから始めますか?





うーん、ご希望とあらば今からでも





じゃあ、今からお願いします





決断早ぇな





あ、あの





ん?どした?





朗読している間、膝枕して欲しいと言ったら、困るか?





いや、やぶさかでは無いぞ





そ、それじゃあ……





よしよし、疲れてるんだな。
それじゃあ始めるぞー





……ああ、この優しくて歪な春に





溺れてしまいそうだ


