広間の奥でその女は不気味に笑っていた。



ふふふ……


広間の奥でその女は不気味に笑っていた。



なぁ……悠……





どうした?
やっぱ怖いか?





あの魔王、すごい美人じゃないか?


心配して損した。
まさか魔王が美人だなぁなんて考えてるとは思わなかったわ。



さぁ、おしゃべりしている暇はありませんよ。
打ち合わせ通りお願いしますね。





任せとけって!


そういって俺以外のメンバーは飛び出していった。
打ち合わせの段階では、浩也は戦うふりだけということになっていた。
もちろん剣を持って振る。しかし、それに攻撃力はほぼない。
そのうえ、変な扱い方をすれば怪我をする。
浩也の動きはかなり制限があった。
ただ、相手は魔王一人とはいえ、こちらは勇者一人分の戦力が欠けている。
厳しい戦いが続いているように見えた。



なかなか……手ごわい……?


その時のレーナの表情に不安を感じ取った俺の胸の中に何か嫌な予感が走った。
そして次の瞬間に、その予感は最悪の状態で的中することになった。



甘いんだよぉ!!


魔王の近くにいた人たち全員が、壁まで吹きとばされた。



なんで……
こんなにつよいなんて……


レーナの表情からこんなはずではなかったといった感情が読み取れた。
少し外に離れていた浩也が目を丸くして立っている。



なんだ?
かかってこないのか?


魔王がニヤっと笑う。
俺に向けられたわけでもないのに背筋がぞわっと粟立った。



ぐっ……





浩也……


魔王が浩也のほうに歩みを進める。
それを見たレーナは右手を構え、光を発した。
その光は浩也と魔王の間を通り、壁に当たった。



まだそんな力が残ってたのか……





浩也!逃げて!


レーナの叫びは魔王の攻撃によってかき消された。



浩也!無理だ!


無意識に叫んだ俺に浩也の目線が合わさる。
しかし、浩也にも聞こえてるということは、魔王にも聞こえているということだ。



なんだ?そのひょろいのは





そいつは関係ねぇ!!


浩也が剣を振りあげる。
が、隙があまりにも大きすぎる。
浩也が俺の目の前まで飛ばされる。
どう考えても限界超えてるだろといいたくなるような状態だった。



浩也……あまりにも分が悪い
逃げよう





よかった……
お前のとこに来れたおかげで勝てるかもしれん……





それどころじゃ――


そういうと同時に浩也は俺に耳打ちした。



っ!!





な?
いけそうだろ?


浩也は俺の顔を見て笑った。
