どんなにがんばっても、
凡人の私じゃ天才には勝てない……。
それが悔しくて、悲しかった。
天才として生まれてきた親友が羨ましかった。
だけど、その気持ちは――
どんなにがんばっても、
凡人の私じゃ天才には勝てない……。
それが悔しくて、悲しかった。
天才として生まれてきた親友が羨ましかった。
だけど、その気持ちは――
ホームルームが終了した途端、
クラスの男子の何人かがはしゃぎながら
教室を飛び出していった。
どうやら少し前に配信された
スマホゲームの関係で、
これから町を歩き回るみたい。
今、流行ってるもんね……。
一方、教室に残っている人たちも
それぞれのグループで集まって
あれやこれやと楽しげに会話をしている。
話題は花火とかプールとかに行こうって
感じのものが多い。
みんなテンションが高めで声も大きいから
全部聞こえちゃってるよ。
でもみんながウキウキしちゃうのも当然かも。
だって明日からこの都立汐入高校は
夏休みに入るんだもんっ♪



さて……と……。


荷物をまとめた私は、
席から立ち上がろうとした。
その時――



早希(さき)ぃ~♪





お~いっ!





あ……。


声のした方へ振り向くと、
大河内 綾音(おおこうち あやね)と
白井 菜由(しらい なゆ)が
こちらへ歩み寄ってきていた。
2人は中学時代からの親友で、
特に綾音は私と同じ写真部に入っている。
そして綾音と菜由は幼馴染同士だ。
両手にたくさんの荷物を
持っているということは、
2人はすでに帰りの支度を終えて
私のところへ来たみたい。



一緒に帰ろぉ~っ!





うんっ、もちろん!





あ……っ!
でもその前に部室に寄らせて。
持って帰りたいものが
置いてあるんだ。





うん、いいよ。





それにしても、
早希は荷物少ないね?





私は先週くらいから
少しずつ持ち帰ってたから。





さすが早希だね。
綾音に爪の垢でも煎じて
飲ませたいくらいだよ。





煎じる必要はないぞぉ?
直接、
舐めちゃえばいいんだしぃ~っ!


ニヤニヤと怪しく笑いながら、
にじり寄ってくる綾音。
私はそれをチラリと横目で見ると、
小さくため息をついてから
菜由の方を向いて満面に笑みを浮かべる。



じゃ、菜由。行こっか。





そうだね。





コラー!
2人とも無視するなぁ~っ!


教室を出た私たちは
校舎2階にある写真部室の前へ辿り着いた。
ここには文化系の部の部室が集められている。
もっとも、吹奏楽部みたいに
主な活動場所や部室が別になっている部も
いくつかあるけど……。



じゃ、私はここで待ってるね。





菜由も入って大丈夫だよ?
ついでにこれを機会に
写真部にも入部しちゃえ~!





ダメだよ、家の手伝いがあるもん。
知ってて言わないでよぉ。





あっはははっ!
ちょっとした冗談だよぉ♪
いつも菜由のお店には
お世話になってますっ!


菜由の家は商店街の中にあるお総菜屋さん。
すごく人気があって、
夕方になるとご近所の人たちで溢れている。
最近は近所の団地でひとり暮らしをしている
お年寄りの割合が増えて、
その人たちがよく買いに来るんだって。
ちなみに私も何度も菜由のお店のお総菜を
食べたことがあるけど、
ついつい食べ過ぎちゃうくらいに
どれも美味しいんだよねっ♪



チ~スッ!





お疲れ様で~す。


私と綾音が部室へ入ると、
ドアの横にあるパソコンで
2年生の諏訪 晴久(すわ はるひさ)先輩が
デジカメのデータをいじっていた。
諏訪先輩は私たちの方を向くと、
机の上に置いてあった月刊写真誌
『モーニングフォト』を掲げながら
やや興奮気味に声をかけてくる。



おぉ、大河内!
モーニングフォトの最新号、
見たぜ~っ!





あ、そっスか~♪





……っ……。


私には2人が何の話をしているのか分かる。
だって私もその雑誌の発売日である昨日、
中を見たから……。
一晩眠ってこうして時間が経って、
ようやく『そのこと』を
忘れかけてきたところだったのに。
その内容を思い出してしまい、胸が苦しくなる。
次回へ続く!
