夏の夜道。
夏の夜道。



つ、疲れた………もうやだ……………転職したい………いや転職しても雇われの身であることに代わりはないからどうせまたこき使われるんだ………もう働きたくない………結婚して専業主婦になりたい………誰か私を扶養して………イケメン金持ちの旦那さん………いや、アラブの石油王……………





お困りのようね!





だっ、誰?!





私の名は枯木燃子(かれきしょうこ)!





誰?!





人呼んで”砂漠の花職人”よ!今宵はその名に恥じぬ様、貴女に最高の夢を見せたげるわ!





そう……都会の砂漠で枯れた、貴女という一輪の花のために、ね☆





ややや、やかましいわ!





………





………





………よしっ、キマッたわね





いやちょっと、お嬢ちゃん……いくつ?夜道に幼女一人は危ないよ?お母さんどこ?送ってってあげようか?





くぅ~!どいつもこいつも私を見れば父・母・交番と………!いいわ!そんな事より!貴女疲れているわね?!





この世に疲れていない日本人なんていないよ?お嬢ちゃん





おおぅ、目が死んでいる!





元からよ……………





なんと哀れな!





うるせぇな





心身の疲れ……やはりそれは人生を汚す悪だわ………でも安心して!そんな疲れを撃退すべく、私はいるの!





ふっ、お嬢ちゃんは元気ね。おばちゃん、お嬢ちゃん見てるだけで元気でたからもう大丈夫よ





そういうことじゃないの!





わかったわかった





そんなリップサービスも疲れも一瞬で吹き飛ぶ、そんな世界に貴女を連れていってあげるわ!


キ
ラ
ン



いらっしゃいませ、お姫様♪





こ……これは………音に聞く
ホストクラブ…………ッ?!?!!





ふんっ!ホストクラブなんてケチなもんじゃないわ!いわばスーパーホストクラブ!お代なんていらないわ!好きなだけイケメン達に癒されてちょうだい!





わ、わー……ホントにイケメンさんしかいない~~~


フラフラ



みんな私が丹精込めて紡いだ花たちなの!存分にご堪能あれ☆





お嬢ちゃんすごいね!疲れが一瞬で吹き飛んじゃったよ~!夢かな?





夢よ!





夢なら夢でいい!





フン。この俺を待たせるとはいい度胸だな。待ちくたびれたぞ、姫





あ~~っ!これは………!





そう………貴女の一番の好みである、眼鏡黒髪鬼畜男子よ!年上でも年下でもどっちでも好きに妄想してちょうだい!!!





最高です!!!!!





しかも都合の良いことにツン控えめの『付き合いたて☆デレ甘モード』に設定してあるの!





ここが天国か…………!





いらっしゃーい!お酒はどーする?お姫ちゃん☆





こっ、こっちは!もしや!





そう!こっちも貴女のハートにズキュン!お姉ちゃんがいる系甘えた年上ボーイよ!





ファーwwwダメな年上の皮を被りつつも、年の功で要所要所でキメてく男、抜かりない~~~☆☆☆





やだな~!褒めてもなにもでないよっ!俺はビールにするけど何飲みたい?





じゃあ私もビ、ビールで!……いや待って、こういうところで女がビールって大丈夫なの?





好きに頼みなさい!





じゃあビール!!!発泡酒じゃないやつ!!!





(発泡酒じゃないやつ…………)





あはは!健気だなあ!りょうか~い!お姫ちゃん!好きなだけ飲んでってね☆





いや~~ん、姫呼び最高☆☆☆





では我らが姫の美しさに乾杯するといたしましょう





金髪碧眼の透明感溢れる王子様だ~~すてき~~美しすぎる~~カンパイッ!!!!!





乾杯!





あー、美しい男の子達に美味しいお酒……酒池肉林はここにあったのだ…………





姫が喜んでくださって私も嬉しいです。何より、姫の笑顔は美しく、私の心をときめかせます





年下敬語ボーイカッコいい☆☆☆





なーに、締まりのねぇ顔してんだ?さっさと俺の隣に来いよ、バカ





強気幼なじみカッコいい☆☆☆





がやがや





以下、ちやほや略





はーっ、満喫した!もう現実なんか帰りたくない!





ふふふ………皆そういうわ。でもここは夢の国なの。たまに来るから良いのよ





そんな事ないよ。イケメンが会社にいたらお仕事頑張れるもん。福利厚生の一環にしてほしい





だまらっしゃい





えー





また浮世で頑張ってきてちょうだい。その為に私たちは存在するのだから……ほら、貴方たちも





名残惜しいが、会えぬ時に相手に恋い焦がれるのも恋の醍醐味………次に会うときを楽しみにしていよう





ねぇ!また来てよね~!俺ちょう楽しみにしてるからさ!





また会いましょう、姫


翌朝。私は不思議とすっきりとした気分で目が覚めた。身体が軽い。朝日が柔らかく部屋に差し込んでいる。時間も出勤にはまだ早かった。
(コーヒーを入れよう。いつものインスタントではなく、ドリップで)
私は人生を再び歩む気力を手にいれた。彼らに貢ぐために働く。そんな目標ができたから。
~fine~
