この世界にはどうしても人間の力では抗いようのない事がある。
それは恐らく神や悪魔・人知の及ばぬ何か大きな存在によるもので、普段と何も変わらぬ日々のなか突如千秋を襲ってきた。
7月という中途半端な季節にやってきた謎の転校生「高梨 紅」は彼と、彼の友人、そして二人が居る教室内の雰囲気を一瞬にして変えてみせたのだ・・・・・・。
この世界にはどうしても人間の力では抗いようのない事がある。
それは恐らく神や悪魔・人知の及ばぬ何か大きな存在によるもので、普段と何も変わらぬ日々のなか突如千秋を襲ってきた。
7月という中途半端な季節にやってきた謎の転校生「高梨 紅」は彼と、彼の友人、そして二人が居る教室内の雰囲気を一瞬にして変えてみせたのだ・・・・・・。
紅は窓際の前から4番目にいる椿の後ろにある空席に座る事となった。ちなみに、千秋の席はそこから一つ飛ばして隣にある。



そのコウモリ喋るなんてすごいなあ!
高梨くんの友達なのか?
俺のカブトムシはにぼしくんって言うんだ!
よろしくな!





ふん・・・・・・。
彼、ファウストはそこらの蝙蝠とは違う特別な存在だぜ。
それと俺の事は<虚ろなる煉獄の使者>または高梨と呼んでくれよ。
まあここでは恐らく人の名で呼ばれる方が問題ないのだろうが・・・・・・ブツブツ





うつろ? れん・・・・・・??
おっと、自己紹介がまだだったな!
俺は新島椿だ!
こっちも好きに呼んでくれて構わないぞ高梨!





漆黒の髪に椿という名・・・・・・。
そして迷いなく簡潔明瞭な受け答え・・・・・・。





?





漆黒・・・・・・。
断罪・・・・・・。





漆黒の断罪者<ブラック・カメリア>と呼ばせてもらおう。





あっはっは!
遠慮せず新島か椿でいいぞ!
授業が始まるから続きはまた後で話そう!





さっそくおかしなあだ名付けられてる・・・・・・。


教室中の生徒たちに強烈な第一印象を与えたまま、紅は大人しく授業を受けていた。
ひそひそと噂声の聞こえる中で淡々とノートをとっている転校生。その様子に千秋は少しだけ安堵する。



もしかして授業中も呪文とか唱え出すんじゃないかと思ったけど、案外まともなんだな。





高梨、授業の方はどうだった?
前の学校と違う所があれば何でも聞いてくれ!





ふん・・・・・・。
案ずるな、抜かりはない。
ところで俺にはあまり関わらない方がいいぜ。
人間は異質なものを嫌うからな、お前も影響を受ける可能性がある。


そう言って不敵に笑いながら走り去る紅だったが、千秋は偶然とじられる前の彼のノートを見てしまった。
そこには丸や謎の記号がびっしりと書き記されていたのだった。
おそらく魔法陣か何かだろう。120%勉強はできそうにないな、あとすごくトイレ我慢してたのかなと千秋は思った。



行ってしまったか。
それにしてもみんな遠慮してるのか話しかけて来ないなあ・・・・・・。
高梨はあの調子だし。





君子危うきに近寄らずってやつなんじゃないの。





何だそれは。
きっと緊張しているんだな!
ここは俺たちが率先して高梨を皆の和に入れよう!





それはどうだろう・・・・・?
彼が皆と仲良くするのを望んでればいいけど。
ああいうタイプは孤独を愛する、みたいなところがありそうだし。





うーん・・・・・・。


その後も特に変わった様子はなく授業は進み、昼休みに入った。



うちは購買で軽食を買うか弁当を持参するんだが、高梨は何か持ってきたか?





俺に関わるなと伝えたはずだぜ、ブラック・カメリア。
それに俺は昼食をとらない。
昼は深淵の涙<ブラックコーヒー>と決めてるんだ。





それだけか!?
身体をこわすぞ!?
俺のパンいるか?





とんだお節介野郎だ。





そうだ! 相原もまだ飯買ってなかったよな!?
購買の場所教えてやったらどうだ?





うわ・・・・・・。
とうとう会話に混ぜられた・・・・・・。





いいけど・・・・・・。
高梨くん困ってるんじゃない?


予想はしていたがやはりこういう流れになったかと千秋はため息をつく。いつもは弁当を持参していたのだが今日はたまたま持ってくるのを忘れてしまったのだ。



こっちは相原千秋!
俺の友達だ!!





ブラック・カメリアの友か・・・・・・。





よろしく、高梨くん・・・・・・。
新島うるさいだろ。
君は静かにお昼を過ごしたいように見えるけど?





俺は気にしてないぜ。





そう?





静寂は常だったが・・・・・・。
たまには喧騒も悪くはないな。
購買とやらに行ってみるか・・・・・・。





じゃあ俺は先に屋上へ行ってる!
後で合流な~!


そう言い残し椿はさっさと一人で屋上へ向かってしまった。



おかしいな・・・・・・。
何でこんなことになったんだろう。


なるべく静かに過ごしたい。
ただそれだけのささやかな願いは大いなる力により捻じ曲げられ、なぜか転校生と二人で購買部へ向かう羽目になった千秋。
しかしこれは奇妙な物語への序章に過ぎない事を彼はまだ知らない・・・・・・。
