


さて、お盆ですね





え?お盆は来月だろう?





松江は気が早いな





あ、そう言えば早盆のご家庭はもう迎え火を焚く頃ですよね





早盆?と言うのは?





明らかに説明を求めるような視線を送られたのでざっくりと説明しますけど、東京というか、江戸の辺りでは他の地域よりも1ヶ月くらい早くお盆をする習慣があるんです





へぇ、そうなんだ





最近は地方から移り住んできた人も多いので、東京都民全員が早盆って訳じゃ無いんですけど、代々住んでる感じのご家庭は早盆だったりしますね





そう言えば、東京から離れた場所なんかだと逆に七夕の時期が遅かったりするよね。8月にやったりとか





ああ、そう言えば仙台は8月に七夕をやるんだったな





それで、お盆がどしたん?





そろそろ暑さがしんどい時期だから、こわい話でもして涼もうかなって





こわい話かぁ。例によって私は持ちネタが無いんだけど、友部と松江は持ちネタあるの?





うーん、俺は弾切れだな





よく考えたら僕も弾切れですね





藤代先輩はなんかこわい話あります?





うーん、冷蔵庫の中のほうれん草が液状化してたとか?





求めてるのはそう言うのじゃなくて





護国寺は何か無いのか?お寺のお墓に何か出たとか





いや、お寺さんは魂を成仏させる所なんだから、彷徨える魂が目撃されたら沽券に関わるでしょう





確かに





こわい話というか、不思議な話で良ければお兄ちゃんから聞いた物が3つほど有りますけど





え?随分持ちネタあるね





3つのうち2つは又聞きなので、ちょっとふんわりしてますけど





どんな話なん?





『鉱山の中で出会った不思議な人』
『黒ミサに現れた悪魔』
『溶けかけた黒い銭蛙』
の3本立てでお送り出来ます





え?なんかタイトルだけ聞いても内容が想像出来ない





良かったら詳しく聞かせてくれる?





はい、良いですよ。まずは『鉱山の中で出会った不思議な人』から





これはお兄ちゃんの体験談なんですけど、小学生の頃、夏休みに島根にある鉱山に見学に行ったそうなんです





他の家族が資料館を見学している間、お兄ちゃんは何故か鉱山の中が気になって、中に入ったんだそうです





初めは真っ暗だった鉱山の中なんですけど、歩いて行くと周り一面を輝く鉱石で囲まれていて、黄色いフード付きのマントを着た人に出会ったとの事です





その人から石の話をいっぱい聞かせて貰って、それから、友達になってずっとここで暮らさないかと言われたそうなんですけど、お兄ちゃんはそれを断ったんです





そうして気がついたら、鉱山の入り口で倒れていて、家族に発見されたそうです





え?ちょっと待って、それ体験談なの?





はい。お兄ちゃんのですけど





ヒィィ……そんな事ほんとに有るの?





どうなんでしょう?お兄ちゃんは発作持ちでよく倒れたりしてたみたいなので、夢だったのかも知れないって言ってましたけど





いや、よく倒れるって言う現実もこわい





実際に有った話ってなるとなかなかこわい感じだね。
さて、次は何を聞かせてくれるのかな?





そうですね、『黒ミサに現れた悪魔』の話をしましょうか





お兄ちゃんが先輩から聞いた話らしいんですけど、その先輩は黒ミサに行った事があるそうなんです





その先輩には難病のお兄さんが居て、その病気を治して欲しいと、黒ミサで悪魔にお願いしていたらしいです





泣きながら何度も何度もお願いしているうちに、どこからともなく花の香りがして、見上げてみると、そこには黒い翼を背負った赤い瞳の悪魔が居て、こう言ったそうです





『そう言う願いは神に祈れ』と。それから、悪魔は『これが神が居る証拠だ』と言って、羽を1枚抜いて渡したんだそうです





その羽はお兄ちゃんの先輩が、話を聞いた当時、まだ大切に持っていて見せて貰ったそうなんですけど、鳥の物にしては余りにも大きくて、これは本当に、悪魔の物なのかも知れないと、そう思ったそうです





悪魔が良い人過ぎて泣ける





と言うか、悪魔が本当に現れたかどうかはともかくとして、黒ミサに行ったって言う事実がこわいすぎる





そしてそれも体験談なの?





どうなんでしょう。お兄ちゃんは体験談として聞いたみたいですけど、どこまでが本当なのかは僕にはわかりません





それだと、残った話も期待出来そうだね。聞かせてくれるかな?





はい。では最後に、『溶けかけた黒い銭蛙』の話を





これはお兄ちゃんが後輩から聞いた話なんですけど、その後輩は、日常的に超常的な物を見掛ける事が多いらしく、この話もその中の1つです





その後輩が街中を歩いているときに、仲睦まじく歩いているカップルが居たそうです。何ですけど、何か違和感があって





良くそのカップルを見てみると、彼女さんの方に、真っ黒くて半分溶けかけた大きな蛙が憑いていて、彼氏さんの財布からお金を掠め取って、食べていたそうなんです





この話はこれで全てなんですけど、その話を聞いたその場に居た全員が、これはこわいと太鼓判を押したそうです





うわぁぁぁぁだめだめだめ、知らぬ間にお金が無くなってるとかこわすぎる





お前こういうのは怖がるんだな





でも、確かに知らぬ間にお金が無くなるとか、考えるだけでこわいですよね





で、これも体験談というか、目撃証言なの?





そうらしいです。まぁ、これもお兄ちゃんからの又聞きなので、実際はどうかわかりませんけど





というか、なんで曙橋君のお兄さんの周りにはこんな話が集まるの?





なんででしょう?
こわい話で無いんだったら、知り合いに錬金術師が居るとか、カストラートみたいな声を出す幼なじみが居るとかまだありますけど





ちょっと設定盛りすぎじゃ無いかなぁ


